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[ 社会派 ]
蝶の眠る場所
水野梓 出版月: 2021年04月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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ポプラ社
2021年04月

No.1 6点 小原庄助 2022/03/19 07:27
物語は、日曜日の夕方から始まる。小学校の校舎屋上から少年が転落死した。テレビ局の社会部に勤める榊美貴は、デスクから連絡を受け、地元の警察署へ急行した。やがて警察は、少年の死亡は事故によるものと発表したが、美貴は自殺の線を捨てきれなかった。
ヒロインの美貴は、まだ幼い一人息子を育てながら働くシングルマザー。左遷同様の異動を命じられるが、それでも少年の悲劇と過去の事件との繋がり、三世代にわたる家族の秘密など、真相を求め取材を重ねていく。
事件の奥に別の事件が潜み、さらにその関係者の間にも隠された秘密があると言った展開で、いったいどのような場所に着地するのか、最後まで予断を許さない。
著者もまたテレビ局でドキュメンタリー番組の制作に関わり、報道番組のキャスターを務めているという。その体験がヒロインの描写や言動をリアリティーを与えているのだろう。事件をめぐる警察や関係者への聴き取り、DNA鑑定や証言にまつわる再調査の過程など、ひとつひとつのエピソードを丁寧に書き込んでいる。
もっともデビュー作だけに力が入りすぎたのか、いささか題材を詰め込みすぎの上、手垢の付いた類型的な部分も目立つ。だが、これだけ複雑に絡み合った事件をまとめ上げた構成力は瞠目すべきものだ。なにより、不幸な境遇に落ちた人たちの心情はもちろん、そんな状況へ追いやった側の胸の内をさまざまな形で描き出しているところがいい。冤罪というテーマを中心にじっくりと読ませる。


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水野梓
2021年04月
蝶の眠る場所
平均:6.00 / 書評数:1