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[ 本格/新本格 ]
しぶとい殺人者 鬼貫警部と四つの殺人事件
鮎川哲也 出版月: 1986年12月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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青樹社
1986年12月

No.1 8点 斎藤警部 2021/07/02 11:05
青樹社がノベルズ版(BIG BOOKS)で’86年末に刊行した中篇集、と書いてるがむしろ長めの初期短篇集。

いかにも昭和末期、80年代ど真ん中らしいおどけた表紙絵(戯画化された鬼貫が、物語に登場する或る証拠物件(?)を突き付けている)が目を引きます。(やたら子ども受け良し)
表紙絵はともかく、読んでみるとあらためて鮎川哲也の相当に独特な、詩情にまで至る淡い、淡過ぎないユーモアとペーソスが本格推理とがっちり手を握った安定感あるスリルを堪能する事が出来ましょう。


悪魔が笑う
舞台は哈爾賓(ハルビン)。アリバイトリックは小味ながら一捻り。人情とその逆転に哀れなる味わい。B級っぽさがあるが、悪くない。

誰の屍体か
この奥深さ、趣深さ、流石です。締めも良いね、紛うこと無きクラシック。ずばり本題そのままの題名にも重み有り。殺人凶器らしき三つの道具が別々の(微妙につながりある)人物に同時に送られて来る、という稚気溢れる発端にさえ、そんな緻密な計算があったとは。。稀代の偏屈者って、そういう事か。。終盤、意外性の高いグロテスクなシーンが爽やかに語られるのは、驚くとともに笑った。被害者(誰?)の恋人と思しき第二の探偵役も存在が光る。振り返れば、細やかな手掛かりがあちこちなんだよな。しかしこの前代未聞(?)の心理的アリバイトリック、大胆な事したもんだねえ。。 

一時一○分
言い訳無用の簡潔なタイトルに見合う、速球勝負にして奥行きのある物理的(補完部分は心理的)アリバイ&真犯人偽装トリックの一篇。締めの文章が胸を突く。。。

碑文谷事件
どこかすっとぼけた前半から、後半の急な発熱が魅力。強烈な不可能興味!実はちょっとした叙述の戯れまで。。アリバイ偽装はかなりの複雑構造。中には薄氷を踏む所もあって。。(それにしては、あの大胆な席外し。。) そっか、逆●●●●●●まで登場か。。 全体通してみると”長旅の時代だったからこそ成立する盲点”のトリックというのが、素晴らしく味わい深いですね。。或るミスディレクションが単なる飾りじゃなくてほぼ核心、という裏を突いた行き方も巧み。●●●●の要素にシレッと覚醒剤が登場したのは笑った(流石に昔のお話)。 最後、ようやく重い腰を上げて犯罪の動機を語り出す鬼貫。だがあの一言だけは言うのを憚った鬼貫。余韻が大き過ぎです。。


著者による「ハルビン回想----あとがきにかえて」は、ほぼ地名や街の構成を淡々と説明したものだが、どうにも、どこからかセンチメントが溢れ出ている。

山前譲氏の解説「凡人探偵鬼貫警部」は、五つのサブタイトル 1 鬼貫の登場 2 鬼貫の実像 3 鬼貫の推理 4 鬼貫の虚像 5 鬼貫の哀愁 で区切って順序立て学術的に解説しているようだが、やはりどういうわけだか情緒に訴えるところ強く、鬼貫警部(見た目以外ほぼイコール鮎川さん)の人物像がセンチメンタルに迫って来る切なさが嬉しい。


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