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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
海神の島
池上永一 出版月: 2020年09月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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中央公論新社
2020年09月

No.1 7点 小原庄助 2020/12/08 09:03
軍用地主の「オヴァ(祖母)」花城漣が残した遺産をめぐって、その孫で夜の銀座の覇権を狙うホステス・汀、フリーランスの海中考古学者・泉、スキャンダルまみれの地下アイドル・澪の美しき3姉妹が繰り広げるデッドヒートは、各国政府まで巻き込んで、破天荒だが現実的だ。
相続の条件は失われた「海神の秘宝」を見つけること。謎の解明に、海中遺産、古代史、先史学、戦争遺跡など考古学の最新情報を取り入れつつ、前人未到の深海へ探索していくシーンは圧巻。実際、奄美・沖縄をめぐる考古学の研究からは近年、人類史を塗り替えるような貴重な発見が相次いでいる。沖縄において米軍基地と先史学は極めてリアルに結びつくということにもなる。
池上ワールドにおいて最も価値があるのは「個人の欲望」である。肯定される基準は、求める力の純度、つまり美しさなのである。欲望に忠実な者ほど、その純粋さ故に翻弄もされるが、その姿は困難な時ほど圧倒的に魅力的で生き生きとしている。
逆に正義だの国家の主権だのといった、建前で行動する者に対しては厳しい。現実の沖縄の平和運動に対して辛辣な批判が投げかけられ、思わずたじろいでしまった。しかし、その先に突き抜けた沖縄の平和を求める強い意志が込められていたりするから、油断ならないのだ。島の本源的な存在によってさらけ出してみせた冒険小説の快作だ。


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池上永一
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