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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
炯眼に候
木下昌輝 出版月: 2019年02月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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文藝春秋
2019年02月

No.1 6点 小原庄助 2019/06/05 10:05
本書は七つの短編で構成。冒頭の「水鏡」は、長島の一向一揆との戦いを背景に、馬廻衆が恐れた姿見の井戸の怪異を、信長が合理的に解釈する。まるで名探偵のような信長が愉快だ。
続く「偽首」は、桶狭間の戦いで起きた、今川義元の首を巡る騒動がつづられる。本書の信長は主役になることがないが、謎や騒動の真相を見抜く炯眼の持ち主であることが、鮮やかに表現されているのだ。
また、九鬼水軍の造った鉄甲船の秘密を通じ、なぜ羽柴秀吉が信長の後継者たりえたのかを明らかにした「鉄船」、長篠設楽原の戦いにおける鉄砲運用の謎に絡めて、明智光秀が叛意を固めた瞬間を捉えた「鉄砲」など、どれも読み応えがある。
そしてラストの「首級」では、本能寺の変の最中に信長が、自分が死んだ後の時代の動きを見通す。この話も主役は、信長に仕えた実在人物だ。しかし本を閉じた後は、先が見えすぎる覇王の肖像が浮かび上がってくるのである。このような手法で信長を描いてのけた作者も、炯眼の持ち主といっていい。


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木下昌輝
2019年02月
炯眼に候
平均:6.00 / 書評数:1