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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
森家の討ち入り
諸田玲子 出版月: 2017年12月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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講談社
2017年12月

No.1 6点 小原庄助 2018/04/19 09:00
手あかの付いた題材である「忠臣蔵」に、こんな切り口があったのかと、まず覚えたのは、そのような驚きであった。
本書は全5話で構成されている。冒頭の「長直の饅頭」は、プロローグといっていい。元禄の世を震撼させた赤穂四十七士に、隣国の津山森家の旧臣が、3人も加わっていた。神崎与五郎、茅野和助、横川勘平である。相次ぐ不運があって改易となり、今は2万石になった森家の現当主の長直は、彼らが討ち入りに参加した理由が森家の家臣時代にあるのではないかという、かすかな疑問を抱くのだった。
以後、「与五郎の妻」「和助の恋」「里和と勘平」で彼らと深くかかわる女性たちのドラマが展開する。注目すべきは、1話ごとにストーリーの時間軸が、過去にさかのぼっていくことだろう。これにより忠臣蔵として始まった物語の焦点が、次第に津山森家のお家騒動へとスライドしていくのだ。しかもそれを通じて、3人が討ち入りに加わった心情が浮かび上がってくるのである。
さらに、エピローグとなる「お道の塩」も、余韻嫋々であった。新たなる忠臣蔵の誕生を喜びたい。


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