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[ 社会派 ]
白磁海岸
高樹のぶ子 出版月: 2017年11月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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小学館
2017年11月

No.1 5点 小原庄助 2018/03/20 10:34
「マルセル」でミステリに初挑戦した作者が、またミステリを書いた。
16年前に大学生の息子圭介を亡くした堀雅代は金沢に移住し、圭介の親友だった柿沼利夫と妻の涼子に近づき、不可解な死の真相を求めていく。雅代はまず利夫の愛人に近づき、ある計画を立てる。
一方、大学講師の薄井宏之は、大学のロッカーにしまわれた朝鮮白磁を発見し、陶芸界の騒動に巻き込まれ、やがて自ら白磁の謎を追求していく。
「マルセル」は実際に起きたロートレック「マルセル」の盗難事件を下敷きにして、とても初めてのミステリとは思えないほど興趣に富んでいたが、本書も悪くない。朝鮮白磁を題材にして日本と朝鮮の歴史的交流をたどり、現代の北朝鮮情勢を踏まえながら事件の背景の奥行きをさらに深くしているからだ。
そのあたりの社会派ミステリ的な視点がいいのだが、最終的に読者の胸に響くのは、作者ならではの”青麦の季節”における恋愛感情のみずみずしさと痛々しさであり、生きることの切なさである。


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高樹のぶ子
2017年11月
白磁海岸
平均:5.00 / 書評数:1