海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ ハードボイルド ]
弁護士探偵物語 天使の分け前
弁護士探偵「私」
法坂一広 出版月: 2012年01月 平均: 4.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


宝島社
2012年01月

宝島社
2013年01月

No.1 4点 小原庄助 2017/11/06 12:05
もしフィリップ・マーロウが日本の弁護士だったら・・・と表現するならそんな小説。
主人公の「私」は福岡県の弁護士。被告人の弁護を担当した母子殺害事件をめぐって、お役所体質の裁判所や検察と真っ向から衝突。司法に見切りをつけた「私」は逆境を乗り越え、事件の裏に隠された巨悪を暴いていく。
全編が主人公のマーロウ風の語りで進行。ブルースをBGMにウイスキーを飲み、危機的な場面でもシニカルに自嘲してみせる。美人に対しては、挑発的なせりふで愛を表現。ただし、マーロウほどの達観した印象はなく、やや意固地に感じられるときもある。そこに人間くさい愛嬌を見出すか、鼻につく自己愛だと受け止めるかが、好き嫌いの分かれ目でしょう。
本作の刑事司法のリアルな内幕描写には、現場に身を置く弁護士ならではの説得力がある。作品の底流に作者の切実な問題意識があるのでしょう。シニカルな語り口は、正義の代弁者然となってしまうことを避けようとした、作者の照れ隠しとも取れる。


キーワードから探す
法坂一広
2012年01月
弁護士探偵物語 天使の分け前
平均:4.00 / 書評数:1