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[ 短編集(分類不能) ]
鍵のない夢を見る
辻村深月 出版月: 2012年05月 平均: 6.00点 書評数: 4件

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文藝春秋
2012年05月

文藝春秋
2015年07月

No.4 5点 E-BANKER 2017/07/21 21:59
~地方の町でささやかな夢を見る女たちの暗転を描き絶賛を浴びた直木賞受賞作~
「オール読物」誌を中心に発表され単行本化された連作短篇集。
2012年発表。

①「仁志野町の泥棒」=田舎の町によくありそうな話。主人公は子供たちなのだが、子供にとって、親たちの罪を知り、その現場を見てしまうことはやはり衝撃なのだろうな。
②「石蕗南地区の放火」=ずばり、ザ・自意識過剰“女”の話。人間どうしても周りと比較してしまうものだけど、特に田舎の場合は、人と人との距離が近い分、その傾向が強いってことかな。男目線からすると、「一生、勘違いしてろ!」って叫びたくなる。
③「美弥谷団地の逃亡者」=冒頭は呑気な逃避行としか思えなかったのが、徐々に不穏な空気が漂ってきて、ラストは「ひぇー」ってことになる。DV受ける女ってみんなこういう感じなのかな・・・
④「芹葉大学の夢と殺人」=なかなか考えさせられる一編だ。特に女性心理について。平凡な幸せが目の前にぶら下がっているのに、不幸せになるに違いない「男」を選んでしまう・・・。いい男って罪だよねぇ。でも、個人的にはこんな男は許せんけどなぁ。
⑤「君本家の誘拐」=ラストは育児ノイローゼ気味の主婦を襲う誘拐事件。ここに登場する夫(まるで昔の自分を見てるようだ・・・)なんて、主婦的には許せないのかもしれないけど、男って所詮そんなもんだぜ、って言いたくなる。余裕のない男なんて、ダメだと思うけどね・・・。

以上5編。
他の方も書かれているとおり、本作は確かにミステリーではない。
ミステリーっぽいタイトルや短評なんだけど、作中に「謎」は登場しない。
名手・辻村深月が、地方に住む小市民たちの揺れ動く心を実に丹念に、実に嫌らしく抉るように書いている。

特に女性心理については、かなりあけすけだ。
損と得、あいつより上回っている、バカにされたくない、もう少し報われてもいい・・・etc
それを汚いとか、打算的だと表現するのは容易いけど、人間誰しもそんなもんだよね。
読みながら、ついつい自分の行動や考え方を反省してしまった。
でも、そうそうは変わらないんだろうな・・・(だって人間だもの)

No.3 5点 メルカトル 2017/07/08 20:56
第147回直木賞受賞作。
まさむねさんが書かれているように、各短編のタイトルはいかにもミステリっぽいですが、ミステリと呼べるような作品は残念ながら見当たりません。
まあこれまでもミステリ作品が直木賞にノミネートされながら、惜しくも受賞できなかったという例は結構多いので、如何にミステリが直木賞と相性が悪いのかがうかがい知れます。本短編集もやはりミステリからは随分遠ざかった印象が強く、だからこそ受賞できたとも言えるかもしれません。個人的には他の作品で受賞するのが作者らしかったのではと思います。もしかしたら辻村氏自身も本作での受賞は本意ではなかったのではないかと想像しますね。
深みはあるけれど面白味はないという、まさに文学と呼ぶべき作品が並んでいます。だから、動機がどうこうとか捻りがないとか、ミステリ的側面から言うと・・・みたいな繰り言は無用の短編集と言えましょう。私は買っていませんが、立派な直木賞作品ですので、世間に認められたことには違いないです。ですが、辻村氏としては異色作であり、決して正当な系譜を継ぐべきものとは言えないと思います。ファンは勿論喜んでいるのでしょうが、どうしても本作がそうした読者に支持されているような気がしません。自分勝手な想像ですから、あまり本気にしないでいただきたいのですが。

No.2 8点 風桜青紫 2015/12/20 02:48
笑いと怖さは紙一重って話を聞いたことがあるけど、この作品はほんとうにこれ。登場人物(特に男たち)がどいつもこいつも阿呆みたいなことを言ってて笑いがこみあげてくるけど、自分では正しいと信じているのが伝わってくるから無性に気味が悪いの。たとえば『石蕗南地区の放火』のバックドラフト先輩なんてもう最高。絶対こいつ魔法使い。猫の写真を送りつけたり、電車で颯爽と注意したり、「俺かっこいいだろ?」みたいな空気がすごくゾクゾクくる。それを突っ込む主人公のスレっぷりがまた笑えるんだが、その当の主人公が売れ残りのアラフォーってのがまた「だめだこいつら」感を加速させてくれる。その他の短編でも『凍りのくじら』のわかおくんがさらにスマートになったような連中が暴れてくれます。自意識過剰な連中に笑いと共感と恐怖あり。辻村さんの作品ではこれがベスト。

No.1 6点 まさむね 2012/10/14 17:07
 直木賞受賞作。すべて,女性視点一人称の短編集。短編のタイトルとは裏腹に,ミステリ度は相当に低いのですが,特に女性心理を捉えた人間ドラマとしては良なのかも(評価は分かれそうですが…)。
 ちなみに,登場人物については,「分かるな~」ってよりも,イライラすることの方が多かったですね。単に私が「女性心理」に疎すぎるからなのかもしれませんが。
①仁志野町の泥棒
 ノンミステリ。うーん,分かるような,分からないような。
②石蕗南地区の放火
 うーん。どちらにも腹が立つなぁ。これもミステリとは言い難い。
③美弥谷団地の逃亡者
 うーん。特にコメントなし。
④芹葉大学の夢と殺人
 この短編集中でベストの印象。日本推理作家協会賞(短編部門)ノミネート作品だそうで。で,います,います,この類のオトコ(とオンナ)。
⑤君本家の誘拐
 うーん。分かるんだけれども,小説としては,何ら驚けないような…


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