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[ 短編集(分類不能) ]
誰でもない男の裁判
A・H・Z・カー 出版月: 2004年06月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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晶文社
2004年06月

No.3 5点 虫暮部 2020/08/27 13:55
 それなりに面白くはあるが、そこまで際立った特異性は感じられず。ものによっては、もう一歩踏み込んでも良いところをえぐくなる手前で引いちゃった、みたいな物足りなさ。過大評価は避けたい。

 表題作は1950年EQMMコンテスト第二席。“彼は無罪に決まっている!”と言う“圧”の中での裁判の話。(読むタイミングが偶然重なって過剰に意識しちゃったけど)エラリー・クイーン『ガラスの村』(1954年)の逆パターンだ。

No.2 6点 人並由真 2018/08/30 16:54
(ネタバレなし)
 私的に今年の8月はいささか忙しかったこともあって、本書を手に取ってから読了するまでちょっと時間がかかった。以下、簡単に各収録作の寸評。

『黒い小猫』……どういうものを書きたいかはわかるけれど、愛猫家にはツラい話。現実にこういう傷ましいことが起きないように、適切な対応を心がけるように、というのも作者の言いたいことではあろうが。もう二度と読みたくない。
『虎よ!虎よ!』……ややこしげな意匠を省いたら、そんなに大した話ではないのでは?
『誰でもない男の裁判』……ミステリマガジン601号のオールタイム短編ベストでも上位に食い込んだ名作だが、送り手の主張が際立ちすぎて却って冷めた。よくある、いいたいことはわかるんですけどねー系の一本。
『猫探し』……『黒い小猫』の口すすぎ編。一本の作品としては良い話だが、あっちと同時収録なので割りを喰った感じ。
『市庁舎の殺人』……思わずニヤリとする事件の真相。この本はここからが見違えるように面白くなった。
『ジメルマンのソース』……エリンとスレッサーあたりの秀作二本をブレンドして、同じ数で割ったような味わい。語り口のうまさをとにかく感じた。
『ティモシー・マークルの選択』……日本の昭和時代の中間小説誌に載る短編ミステリという感触だが、これも語り口の秀逸さで読ませる。オレもスカートをはかずにパンティだけで街を歩く美少女に会ってみたいもんだ。
『姓名判断殺人事件』……こういう種類のサプライズが来るとは思っていなかった。最後を締める秀作。まあ21世紀ではこのトリックはまず不可能だろうけれどね。

 ……というわけで後半の面白さを前半のイマイチぶりが相殺して、この評点。しかしいくつかの作品は日本版EQMMやHMMで昔に読んでるはずなのに、けっこう忘れているもんだ。
 この作者はもう一冊分、日本でオリジナル短編集が組めるくらいの作品数があるようなので、いつか刊行してほしい。そっちは当たりの打率が高ければいいなあ。

No.1 7点 mini 2009/05/20 10:17
ディクスン以外のカーと言うと、ハードボイルド作家フィリップ・カー、山岳ミステリーのグリン・カーらがいるが、短編の名手A・H・Z・カーを無視することは出来ない
強いてジャンルを言えば奇妙な味系異色短編作家だろうが、かなり本格寄りな短中編もありジャンル分けは難しい
戦後に登場したこの手の異色短編作家の新鋭だろうと生年を見ると1902年生まれ
J・D・カーが1905年生まれだから、っておいおい何だよ!A・H・Z・カーの方が年上なのかよ!デビューが遅かった遅咲き作家ということか
A・H・Z・カーは本業で充分裕福だったので、アマチュア作家として悠々自適にEQMMに短編を投稿していたのだろうな
そういったゆとりが感じられる独特の味わいがあり、状況判断に迷った時の人間心理への洞察には深みがある
A・H・Z・カーの短編集編纂は本国アメリカでも計画があったようだが流れ、世界で初めて日本でまとめられたのだ
晶文社版の解説によると山口雅也のお気に入り作家だったらしく、掲載されたミステリ・マガジンのバックナンバーを漁っていたようだ
T・S・ストリブリングもそうだが、こうした雑誌に載ったまま埋もれていた作品の発掘を山口雅也は好むからなあ


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A・H・Z・カー
2004年06月
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平均:6.00 / 書評数:3
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