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[ サスペンス ]
脳男
脳男
首藤瓜於 出版月: 2000年09月 平均: 6.25点 書評数: 8件

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講談社
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No.8 8点 虫暮部 2019/04/03 11:38
 これは面白いキャラクター小説だ。難しそうなテーマを現代医学の視点でもっともらしく血肉化することに成功していると思う。医師も警部もちょっと鈍いんじゃないのと感じたところはあるが、読者に解説をする方便としてそういう会話は必要なのだろう。
 どうしても宣伝文句では鈴木一郎の特性が売りになってしまうから、ネタバレの上で読む羽目になるのが痛し痒し。それだけならまだしも、ストーリー後半過ぎの事柄まで粗筋で明かすのはあんまりだ。

No.7 9点 Tetchy 2014/01/20 23:23
島田荘司が21世紀ミステリとして、現代科学の知識をふんだんに取り入れ、まだ見ぬ本格ミステリを21世紀になって提唱したが、本書はまさにそれに先駆けた当時最先端の科学を盛り込んだミステリとなっている。

本書の魅力はなんといっても鈴木一郎と云う男の奇怪さだろう。
とにかく主人公の精神科医鷲谷真梨子が鈴木一郎の過去を辿るうちに出くわす入陶大威という自閉症の少年の様子が非常に興味深い読み物となっている。感情を持たない人間の行動とはこれほどまでに想像を超えるものなのかと専門分野の観点から語られる。
特にこの大威という少年の特異性には目を見張るものがある。何かの指示が出されるまで動こうとしないし、人間の三大欲である食欲さえも起こらない、睡眠欲も起こらなく、生理現象でさえ自らの意志で対処しようとしない。また情報の取捨選択をする認識がないため、見た物すべてを覚えてしまう。運動も指示一つで止めろというまで延々と続ける、等々。まさにロボット人間そのものと云えよう。
本書の読み処は昨今研究が進んで明らかになった自閉症の仕組みを脳科学の分野で詳しく症例を交えて詳らかに語られている所にある。現在ではもはや自閉症という呼称はせずに発達障害という呼び方をするが、一口に自閉症と云っても色々な症状があることが知らされる。その想像を超える現象の数々に私は思わず食い入るように読まされたのだが、そんな専門知識を見事に自家薬籠中の物として鈴木一郎と云うキャラクターを生み出した作者の手腕を讃えたい。

しかし物語はそれだけではなく、鈴木一郎の正体を巡る謎から一転鷲谷真梨子と鈴木一郎がいる愛和会愛宕医療センターが爆弾魔緑川によって占拠され、広い大病院の各所で頻発する爆破事件というパニックサスペンス小説へと変貌する。一言で云い表せない一大エンタテインメント作品なのだ。

また連続爆弾魔緑川の一連の事件にもミッシングリンクがあったことが明かされる。

しかしそんな本格ミステリ趣味をも盛り込みながらもやはり鈴木一郎と云う男の謎には添え物に過ぎないように思われてしまう。それほどこの“脳男”は鮮烈な印象を私に残した。

No.6 7点 メルカトル 2013/09/25 22:10
異様なタイトルから受ける、暗めのサイコ・サスペンス風の印象とは内容がかなり違っていた。
前半から中盤にかけては、感情のない男、鈴木一郎の脳内を様々な人の証言からえぐっていく、やや学術的な要素を含むサスペンスとなっているが、これはこれでなかなか興味深い。
後半は一転スピード感あふれるアクションシーン満載で、息もつかせぬ急展開に、手に汗握ること必至である。また、警部の茶屋、心を持たない男鈴木一郎、鈴木の人間性についての解明を任された真梨子を中心に、それぞれのキャラがいい味を出している。
思っていた以上に面白く、自分としてはかなり満足しているが、やはり好みが分かれるタイプの作品といえるかもしれない。
まあしかし、一読の価値はあると私は思う。

No.5 3点 蟷螂の斧 2011/12/01 09:45
江戸川乱歩賞受賞作とのことであるが、ミステリー度は低かった。心を持たない理由(唯一の謎?)も判明するのだがあまり響いてこなかった。

No.4 7点 VOLKS 2011/05/01 13:55
すっごいキャラクターが現れた!って感じで素直に嬉しかった。
鈴木一郎はもちろんのこと、茶屋刑事もすごくいい。
続編もぜひ読んでみたい。

No.3 6点 vivi 2009/09/13 01:50
このタイトルは一体なんだ?と思い、読んでみました。
謎に対して向かっていく展開は結構スピーディーで、
途中、そんなにだれることもなく読み進めました。

「脳男」のキャラはなかなかすごいですね!
これは、ある意味最強でしょう。
この際限の無い記憶力、私も欲しいです・・・

No.2 3点 いけお 2008/11/03 21:27
重そうに見えて内容も軽薄で、矛盾点も多くつまらない映画みたいだった。

No.1 7点 rintaro 2008/08/01 12:32
正直、読了後の最初の感想は「これミステリーなの?」だった。連続爆破事件の犯人も作品の最初から割れてるし、犯人の動機もとても推理できるものでない。半分以上のページは「鈴木一郎」の正体探りに割かれているし、連続爆破事件も作中では彼の超人的能力のお膳立てとしてしか機能してない。
だから単純に読み物として評価してみる。そうすれば相当に面白い。出てて来る登場人物もみな魅力的だし、なにより「感情を持たない男」の鈴木一郎のキャラクターがかなり新鮮だった
話の展開も彼の正体をさぐって日本中を行き来し、そのたびに彼の異常な過去と能力の秘密が少しずつ明らかになっていくのは息も付かせない。なんてかっこつけて紹介してみましたが、この作品を一言で表すなら「マーブルコミック等のヒーロー物+ピアノマン+ほんのちょっとミステリー」で足りると思います


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