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[ サスペンス ]
パコを憶えているか
シャルル・エクスブライヤ 出版月: 1967年08月 平均: 7.67点 書評数: 3件

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1967年08月

No.3 8点 tider-tiger 2023/03/11 15:55
~父を殺したマフィアのドン、ビラールに悪行の報いを受けさせる。ミゲル・リューヒ刑事の悲願だった。リューヒはとある事件で世話してやった不良少年のパコをビラールが経営するキャバレーにスパイとして送り込んだ。作戦はうまくいくかに見えたのだが、ある日を境にパコからの連絡が途絶えた。

1958年フランス、なのに作品の舞台はイタリア。マフィアもの。作者本人も結構な強面。著者近影のすぐ下に『アル・カポネ』と書いてあったら「ああカポネってこんな顔をしてたのね」と納得してしまいそうなくらいだ。
顔は強面でも文章は読みやすくて、なおかつ展開も澱みない。エンタメの王道とは言わないが、作劇の王道とでもいいたい素晴らしい作り。構成がいい。キャラの配置、使い方もいつもどおり申し分なく、平易な文章の中にときおり鋭い観察やシニカルなセリフが光る。スリリングな展開に頁を繰る手が止まらなくなる。
ただ、ラストにやや強引な部分がある。そこがうまく処理されていたら本格ミステリとしても傑作だった。自分の評価はあくまで本格としても充分楽しめるサスペンスの傑作。

小さな仕掛けを積み重ねつつ、けっこう大きな仕掛けもあったりして、気が付いたらやられている。
『パコを憶えているか』このフレーズが作中に何度も繰り返され深い印象を残す。この人の作品にはやはり基底に愛がある。それがどのような物語であれ、どこへ向かうのであれ。
そんな作品でありながら登場人物に対する作者自身の感情移入を欠いている。ただただ物語に奉仕させるべくキャラを適材適所に配置しているようだ。
エクスブライヤとシムノン。フランスでは二人とも大家とされているが、読めば読むほどに小説作法は真逆のように思えてくる。
日本の一流作家でエクスブライヤと近い人は結城昌治かな、などと思っていたのだが、今回この書評を書いていてそれも少し違うなと感じた。同じ一流でもいろいろな種類があるものだ。

しつこいけど、この人は面白い未訳作品がまだまだあるはず。

No.2 8点 人並由真 2016/09/17 16:46
(ネタバレなし)
 スペインのバルセロナ。当年40歳の中堅刑事ミゲル・リューヒは、巡査だった父エンリーコを十数年前に殺された。その仇はなかなか尻尾を出さない裏社会の大物イグナシオ・ピラールで、リューヒは検挙の機会を今も執拗に狙っていた。リューヒは、不良だが根は純真な面もある弟分の美青年パコ・ポリスに、ピラールが実質的に経営するキャバレー「天使と悪魔」に勤務し、有益な情報を得てくるよう請願した。この依頼を受けて内偵を続けていたパコだが、彼はある日惨殺され、その生首がリューヒの自宅に送られてくる。リューヒを後見するマルチン警部の心配も他所に、父親と弟分を殺されたリューヒはピラールに対して復讐の鬼となるが、そんななか、何者かがそのピラールの側近の悪党たちを次々と刺殺していく……。

 先にレビューした方、あるいは登録した方は「サスペンス」に分類しているが「本格(フーダニットのパズラー)」でもいいのでは、と思う。いずれにしろ強烈なサスペンスを感じさせるフーダニットの優秀作で、犯人は確かに意外であり、動機もうーん、なるほど、と思わせるものだった。終盤、残りのページが少なくなっていくなか、まだ連続殺人が継続し、ドラマチックな展開もよどみない、そして最後の最後に明かされる事件の構造の本当の真相…いや、2016年現在、入手しにくいポケミスの筆頭格というので頑張って取り寄せて読んでみたが、これはたしかに面白かったわ。

 エクスブライヤ は翻訳されたものは何冊か買ってあると思うけど、実はこれが初読。パズラーの未訳の作品もまだまだあるみたいなので、今からでもどんどん発掘してほしい。

No.1 7点 こう 2008/05/17 22:48
 連続殺人物の意外な秀作です。意外な犯人もあり作品も短く一気に読ませますが50年前の作品とはいえ最後にわかる真犯人が警察につかまらずに連続で殺人実行可能かどうかは疑問符がつくのとストーリ上効果を上げている脅迫状が真犯人とは全く無関係でありうまく話しをつなぎあわせてる感も否めません。結末は皮肉が効いており個人的には面白かったです。


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シャルル・エクスブライヤ
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