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[ 本格 ]
猫と鼠の殺人
ギデオン・フェル博士シリーズ。別題『嘲るものの座』
ジョン・ディクスン・カー 出版月: 1955年12月 平均: 6.09点 書評数: 11件

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早川書房
1955年12月

東京創元社
1981年04月

東京創元社
1981年04月

早川書房
1995年09月

No.11 6点 文生 2023/06/23 22:02
不可能犯罪も怪奇趣味もなく、カーの作品としては地味ですが、ストーリーに緊張感があり、ヒネリの効いた皮肉な展開は十分に楽しめました。トリックに関しては可もなく不可もなくといったところ。

No.10 6点 レッドキング 2020/02/09 18:16
2回射殺された金持ち色男と容疑者の非情裁判官と目撃者の娘。アリバイ時間トリックの解釈を持ちカードに、娘の証言をサイ目にして、自白心理戦ポーカーを争う探偵二人と容疑者。女の資産が目当ての、いかにもなジゴロ風に見せかけて、実は骨のあるなかなかの資産家だったという被害者人物像返しと、アリバイトリックがちょっと面白い。

No.9 6点 弾十六 2018/11/28 22:05
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士 第14作。1941年出版。創元文庫で読了。
登場人物が少ないので大丈夫かな?と思うくらいのシンプルな話。特異な性格のキャラが出てくるので良いJDC/CDです。もー少し被害者の描写を多くして、事件前の猫と鼠のいたぶり描写を肉付けしておけば、もっと傑作になったと思います。
奇天烈度がやや低いのと結末に不満(チュートハンパやなー、な感じ)があるので中傑作「弱」という評価になりました。
ところでプールの場(第14-16章)ですが、ずっと「テニスコートの謎」の一場面だと記憶していました。どーゆー狙いの一幕なのか、よくわかりません… 何か隠された深い意味があるのでしょうか?
さてトリヴィアです。原文入手出来ていません。
p8 かつら: 18世紀のコスプレみたいなやつ。まだ続いてるのか、と思ったら、民事裁判では2008年廃止。
p37 年500ポンド: UK消費者物価指数の比較で約54倍(1940/2018)。現在価値は日本円にして393万円ほど。
p54 実話雑誌: 米国では1920年代〜1940年代に流行。英国版Trye Story誌は1922年からHutchinsonが出版。
p146 ナポレオンいわく。男は6時間、女は7時間、愚者は8時間眠るとな。: Six hours for a man, seven for a woman, eight for a fool. 英国の古い諺?歴史上のナポレオンとはあまり関係ないようですが、ナポレオンが引き合いに出されることも多いようです。
p188 公衆電話… 5ペンス… Aボタン: Public telephones in 1940s BritainでWEB検索すれば「A ボタン」が見られます。デザインセンスが実に英国らしいダサさで良い。
p190 水着: 詳しい描写なしです。swimsuit 1940で検索すると、すでにセパレート型が登場しているようですが、ワンピース率が高いかなぁ。
銃は「アイヴス=グラント32口径」リボルバーが登場。「銃身を折ってみると、弾丸は全部装填されて一発だけ撃たれている。」という描写があるのでWebley & Scott .32 Caliber Revolverみたいなトップブレークの拳銃なのでしょう。でもIves Grantというメーカーは全く聞いたことがありません。ニワカマニアなので、存在しない!と断言することも出来ません… この場面で作者が架空のメーカーをでっち上げる必要は無いように思うのですが… (2018-12-14追記: Iver Johnsonにも32口径トップブレークのrevolverがありました。1933年F.D. ローズヴェルト暗殺未遂事件に使われたやつです。この記憶が生々しかったので出版側が難色を示した?のかも。多分JDC/CDは気にしないタイプ。最近入手したかなり網羅的なカタログにもIves又はGrantのいずれも掲載されていなかったので、この名称は架空のものと断言しても良さそうです)
p14 小型の回転拳銃の弾丸: なぜリボルバーの弾と分かるか、というと薬莢にリムがあるからですね。

ここで問題。本書の作中時間は何年でしょうか?
作品中に、4月27日金曜日(p53)、4月30日月曜日(p227)と明示されています。ですから簡単にわかるはず… しかし、この日付は矛盾しているのです。
登場人物がソドベリー クロスの毒殺事件(緑のカプセルの謎)に言及(p84)しており、作中時間はこの事件の後であることが明白です。(震えない男p85にソドベリー クロス事件は1937年10月に発生した、との記述あり)
ところが「4/30月曜」の該当年は原作出版年(1941)に近い範囲(1930-1950)で1934年と1945年だけ。
ああJDC/CDがやらかしたな… 単純ミスだよ… となってしまいますよね。でも日付がもう一つ。p267に「4月30日火曜日」とあり、訳注では「原作の誤り。5月1日火曜日のはず」と指摘しているのですが「4/30火曜」の該当は1940年です。とすると、実はこれが正しく「4/30月曜」が誤りなのか! と結論に飛びついたそこのあなた。あなたは重大な歴史的事実を忘れています。
それは英国では1939年9月1日に始まった灯火管制(blackout)のことです。
この作品中の夜間の光や窓の扱い方は平時のもので、灯火管制下の世界ではありえません。

以下、解決篇です。
多分、作者は1940年「4/30火曜」で初稿を書いたのでしょう。そのあと灯火管制の開始時期を思い出し、1940-1-1は月曜日、1939-1-2は月曜日、というような事実から「日付を一つ後ろ送りすれば1年前にずらせる、それなら灯火管制前になるのでオッケー」と考え1940年「4/29月曜」→(作者のつもりでは)1939年「4/30月曜」などと修正したのだと思います。(1箇所p267は修正漏れ) なのでJDC/CDが執筆中に想定していた事件発生年は1939年だと思うのです。(実際の1939年4月30日は「日曜日」) 作者は閏年のズレ(3月以降は2つズレる)を忘れていた、というのが私の仮説です。Q.E.D.

No.8 6点 ボナンザ 2016/12/12 09:11
嘲るものの座の方がタイトルはかっこいいですが、訳は創元の方がいいようですね。
カーらしいトンデモトリックが炸裂する作品ですが、許容できるかは人によるでしょう。

No.7 5点 nukkam 2016/08/15 08:13
(ネタバレなしです) 1942年発表のフェル博士シリーズ第14作の本書はカーの多くの作品で見られる怪奇趣味や不可能犯罪とかいった派手な演出はなく、ユーモアも控え目で(プールでの飛び込みの場面なんかは結構楽しいですけど)ごく普通の本格派推理小説といった印象を与えますが、実はかなり大胆なトリックが使われていてどんでん返しが効果的な作品です。このトリック、実際の事件でもあったトリックだそうですが専門的知識のない一般読者にこれを解決前に予見するのはちょっと無理じゃないかと思います。了然和尚さんのご講評で的確に指摘されているように、カーがどれほど好きなのかによって本書の受け容れられ方は異なると思います。

No.6 5点 蟷螂の斧 2016/07/25 15:37
裏表紙より~『猫が鼠をなぶるように、冷酷に人を裁くことで知られた高等法院の判事の別荘で判事の娘の婚約者が殺された。現場にいたのは判事ただ一人。法の鬼ともいうべき判事自身にふりかかった殺人容疑。判事は黒なのか白なのか? そこへ登場したのが犯罪捜査の天才といわれる友人のフェル博士。意外な真犯人と、驚くべき真相を描くカーの会心作』~

脱力系でした。ラストでのフェル博士の行動の意味が全く理解できませんでした。銃撃については、相当の出血があると思われますが、血痕につき一部記載あるのみで、現場状況から見てかなり不自然です。登場人物がこの点に触れないのは???。また娘の不可解な証言(庇うなら黙っていた方がよい)も納得いかなかったです。まあ、展開は楽しめましたし、ロマンスもあったので甘目の採点となりました。

No.5 8点 斎藤警部 2015/08/08 23:07
結末の意外性に圧倒された想い出の作品です。 色々と「まさかね。。」って。 「電話」の件が印象深い。

No.4 9点 了然和尚 2015/05/21 13:18
この作品はカーが好きかどうかで評価がはっきり分かれるでしょうね。物語の出だしから犯人は判事以外にあり得ないわけで、別人なら作品として成り立たないでしょうね。一旦、別の容疑者に振って、やっぱり戻ってくるあたりは予想どおりなのですが、最後に予想外の事態が発生! 普通、自殺していただきますよね。(ま、平凡ですが)自殺により結末をつけることさえ許されず。。。これは犯人が人を裁く司法の頂点であるゆえに、最高の結末ですよね。カーの超法規決着が極まりました。トリックはまあ、ゾンビはいただけませんが、犯人が何もせず、被害者がわざわざ不可能状況を作るというのは好きなネタです。

No.3 4点 kanamori 2010/07/02 00:11
ポケミスの「嘲るものの座」で読みました。
この密室トリックは、いつかはカーの作品にも出てくるだろうなあという感がありました。
しかし、この作品の肝はおそらくそのトリックではなく、真犯人に降りかかる皮肉な状況ではないでしょうか。

No.2 4点 Tetchy 2008/12/21 13:50
被告人に容赦なく死刑を下す血も涙もない判事が、自ら殺人の容疑に立たされるという趣向はドラマチックでいいのだが、この作品はそれだけのような気がする。
この判事が窮地に立たされ、改悛するといった人間ドラマが見られるわけでもなく、最初から最後まで嫌なヤツであるから、読者の感情移入を注ぎにくい人物になっており、自然この判事が主張するような無罪をいかに証明するかという方向にどうも乗っていきにくい。

で、本作ではまたもトンデモ真相が明かされる。こういういかにもありえそうに思えない真相がこの頃には多いのかもしれない。『仮面荘の怪事件』でも同様の感慨を抱いた。

で、真犯人を知るにあたり、カーのやりたかった趣向が見えてくる。ま、これで溜飲も下がるようなものだが、もう少し何かが欲しかった。

No.1 8点 2008/12/11 20:57
不可能犯罪の巨匠が今回挑んでくれたのは、密室などの「不可能」性ではなく、嫌疑がかかった冷酷な判事の証言をめぐり、心理的にはどう考えても矛盾が出てきてしまうという「不可解」な状況です。個人的にはこういう謎の方にむしろ魅力を感じます。
1回偽の解決を示した後で明かされる真相は、フェル博士自身も言うように突拍子もないものです。
これはいくらなんでも信じられない、と言う人もいるとは思いますが、矛盾点がさらりと解消されるこの結末はとんでもない意外性とあいまって鮮やかです。


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