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[ サスペンス ]
カメレオンの影
ミネット・ウォルターズ 出版月: 2020年04月 平均: 5.00点 書評数: 2件

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東京創元社
2020年04月

No.2 5点 SU 2023/10/31 22:45
チャールズ・アクランド中尉は派遣先のイラクで、偵察任務の最中に爆弾で頭部と顔面に重傷を負った。ロンドンの病院が昏睡から目覚めた彼は極端な女性嫌悪を示し、母親や元婚約者への粗暴な振る舞いで周囲を惑わせるようになった。どうやら、アクランドの記憶には欠落した部分があるようだ。除隊した彼は、トラブルを起こして警察に拘束されてしまう。近隣では一人暮らしの男性が殴り殺される事件が続発しており、アクランドはその嫌疑をかけられる。
本書でメインとなるのは、アクランドがどういう人物かという謎である。負傷して以降、性格が変わったとしか思えない彼は読者に不安と不快感を与える存在であり、警察ならずとも彼を容疑者と考えるだろう。しかし、ミステリとしては当たり前すぎるのも事実。そう考えると、事件県警者の誰もが多面性を持つ存在に見えてくる。このあたりの重層的な人間描写はまさに作者の本領発揮である。
そんな中、特に異彩を放つ人物が女医ジャクソンだ。彼女が、女性を敵視するアクランドの奇妙な共闘に至る展開が面白い。真相は作者自身のそれまでの作風をミスリードに利用したようなふしもあり、作者の円熟した境地を堪能できる。

No.1 5点 猫サーカス 2020/06/30 17:58
英国陸軍の中尉アクランドは、派遣されたイラクで重傷を負って帰国した。病院で目覚めた彼は、家族や看護師にも心を閉ざし、訪れた元婚約者にも暴力をふるう。やがてロンドンで一人暮らしを始めた彼は、パブで騒ぎを起こしたことがきっかけで、連続殺人の容疑者とされてしまう。近隣では、軍歴のある男が殺される事件が相次いでいたのだ。事件そのものについては記事が引用される程度。病院内、さらに退院後のアクランドの日常が物語の中心にある。そして、彼に疑いを向ける警察の捜査が語られる。アクランドの不可解な行動が、警察だけでなく周囲の人々の疑念を生み、物語は不穏な緊張を漂わせて展開し、やがて意外な結末へと着地する。600ページに及ぶ長大な作品だが、長さに見合うだけの濃密なサスペンスと驚きを堪能できる。


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ミネット・ウォルターズ
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