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[ ハードボイルド ]
狼よさらば
「自警団」ポール・ベンジャミン
ブライアン・ガーフィールド 出版月: 1974年01月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1974年01月

No.1 7点 人並由真 2024/03/31 07:33
(ネタバレなし)
 その年の6月のニューヨーク。会計事務所「アイブス・グレグソン・アンド・カンパニー」のスタッフである47歳の公認会計士ポール・R・ベンジャミンは、自分の妻エスターと娘のキャロルが強盗に襲われたと、キャロルの夫の若手弁護士ジャック・トービイから電話で知らせを受ける。その日のうちにエスターは死亡。キャロルも全快は困難な心の傷を負った。三人の犯人が身元不明な麻薬中毒らしい若者たちとわかるが、警察の捜査は進まない。町の凶悪な青少年犯罪者への怒りを募らせたポールはひそかに拳銃を入手。闇の謎の「自警団」として、強盗を行なう青少年たちを秘密裏に抹殺してゆく。

 1972年のアメリカ作品。
 これ以前にも長編小説の著作があるが、本作が出世作になった作者ガーフィールドの社会派ノワール。
 1974年にチャールズ・ブロンソンの主演で主人公の名字を変更して映画化され、映画オリジナルで4つも5つも続編が作られる長期シリーズとなった。
 一方で、原作小説の主人公ポール・ベンジャミンを主人公にした小説の方も、続編が書かれている(ただし未訳)。

 ハヤカワノヴェルズで邦訳された原作(人気で古書価も総じて高額な上、なかなか市場に出ないので、入手に苦労した)は、本文一段組で総ページ数240ページ弱と読み手に負担がまったくないボリューム。会話も多く、実にスラスラ読めた。

 はっきり言って、この上なくシンプルな筋立て。とはいえホワイトカラーのお父さんが復讐の念を燃やしながら<闇の自警団>へと転じていく流れは、これぞ、その手のものの王道という感じ。描写の過不足感がない良いコンデンスさで語られ、それなり以上の読みごたえを感じさせる。

 例によって邦訳の刊行当時、北上次郎あたりがホメていた気もするが74~75年の新刊ではその記憶も実は微妙で、まだ「小説推理」のレギュラーコーナーが開始されてなかったかもしれない? いずれにしろ本作は、初期の大藪春彦あたりも書きそうな形質の長編で、シンプルな話ながら原初的な、ある種の力の場を感じる作品である。
 ラストシーンも印象的。
 ベンジャミミンものの原作の続編を読んでみたい、とは思う。
 現在の新潮文庫あたりで、発掘翻訳とかしてくれないものだろうか。


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