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ミステリの祭典

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非公認ゃんさんの登録情報
平均点:6.00点 書評数:1件

プロフィール| 書評

No.1 6点 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件
白井智之
(2022/10/17 21:19登録)
【ネタバレ含む】初レビューです。
本作は語られている場では賛一色ですが、個人的にノリ切れなかった箇所があり、モヤモヤを吐き出したく書評を書かせていただきます。

【良いところ】
とにかくリーダビリティに溢れている。
堅苦しすぎず、稚拙すぎない筆致は最近の売れ線作家の中では貴重。キャラクタの思考、状況がスッと頭に入ってくる。
宗教団体の信者は病気や身体的障害がなかったことになる(と世界を認識している)という特殊設定を活かした衝撃的なトリック。犯行中のビジュアルを想像すると肝が抜かれる思いになる。
展開としても、ありがちな未開の土地や往路の出来事などのしつこい描写は程々にカットしていてダレずに読めました。

【気になる点】
150Pが割かれている解決編が売りとのことだが、3つの多重解決すべて探偵側が一方的にまくし立てる形で進められ、手段・動機ともに『探偵はこう思いました』の投げっぱなしになっている。
糾弾された犯人たちは言われっぱなしで反論しない・できないため、要は『この事件、こういう解釈もできますよね。知らんけど』を連続して畳みかけられる構成になってしまっている。
また看過できない点として、多重解決最後の犯人としてある信者が指名されるのだが、前述したように信者は身体的な欠損等は知覚できないというルールにも関わらず、その認識のギャップをバリバリに活かしまくって犯行に取り入れている。『実はこの犯人は宗教に染まっていないのでした』という描写もなく、1つの論中で大変な矛盾が発生しているように思える。たしかに物語中での犯人の秘匿の方法及びそのタネ明かしは鮮やかだが、やはり釈然としない。

多重解決を超えた先に作者の最も書きたかったと思われる主人公の選択とその動機が語られるのですが、(布石がふんだんに打たれているにも関わらず)あまりにリアリティのない、幼稚な言葉遊びのように感じられたのは解決編の宙ぶらりん感に引っ張られてしまったからでしょうか。
総合的に大変楽しんで読破したのは間違いないのですが、後で思い返せば思い返す程頭の中で引っかかる、少し残念な読書体験でした。

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