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ミステリの祭典

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モグラの対義語はモゲラさんの登録情報
平均点:5.95点 書評数:44件

プロフィール| 書評

No.4 5点 木曜の男
G・K・チェスタトン
(2021/04/16 18:13登録)
これは……何というか凄かったな。今の私では理解できないというか。
チェスタトンは童心しか知らなかったのでその印象で読んだのだが、イメージを裏切られたなというのが読後最初に思った感想である。
とりあえず強烈で心地よい熱量は感じられるし、序盤の無政府主義者の団体に潜り込む件なんかはポップにエンタメをやっていて面白い。ただまあ、個人的には微妙に人に薦めづらいかなあ。いや、こういうの結構好きなんだが。


No.3 3点 名探偵に薔薇を
城平京
(2021/04/13 15:44登録)
文章といい話の展開といい、どうにも受け入れ難いタイプの作品だった。私の性格が悪いと言えばそれまでなのだが、作者の陶酔を感じるというか、狙いが頭にチラついてダメだった。作品に結末へ前のめりに突き進みすぎていて作品に入り込めず、物語に対し穿った姿勢でしか臨むことができなかった。第一部の毒の設定なども好かない。キャラクターもなんかクサいんだよなあ。

リアリティの無いキャラクターや設定はむしろ好みなはずなのだが、恐らく私の中にある基準に届いていない、振り切れていないものだったのだろう。また、バッドエンド作品は設定はともかくセリフや振る舞いにはリアリティがあった方が、私は面白がれるのだろう。この作品は台詞が妙に芝居がかっている、わざとらしいものが多かったと思う。ドラマとか好きな人はこういうの好きなのかな?

ボロクソ書いてしまったが、人によっては驚かされまた胸を打つ作品だと思う。胸を打ちに行ってる感じがする作品がダメな人は多分楽しめないだろう。


No.2 5点 コズミック
清涼院流水
(2021/04/10 23:46登録)
むしろ10点つけたいぐらいなのだが、果たしてそれが「ミステリの評価」として10点なのか甚だ疑問だったので、煩悶の末この点数に落ち着いた。いや実際には10点なのよ、ほんとよ? 

余りに遠大で非常識なトリックだが、実は個人的には荒唐無稽すぎて推理不可能って程でもないというか、ちゃんと個々の死に方を追い、濁暑院の小説周りを踏まえて考えれば、そんなにトンデモでもないと思ったので、ミステリとしては5点よりもうちょっと上でも構わないかなと思っている。真犯人はともかく。

恐らく当時としては濃すぎるキャラクター設定に、少年漫画のような格付けとインフレ、のっけの予告上から常軌を逸している事件など、人によってはとても受け入れられない要素がこれでもかというほど詰め込まれているが、私はむしろその熱量がすごく良かった。やりすぎな描写や世界観に振り回される心地よさ、読めばきっとその感覚が、この作品に込められたその魅力が分かるはず。まあ、それが魅力として機能しうると理解できることと、実際魅力的に感じられるかは別問題なのだが。

点数のモードが5点のミステリではなく、誰かにとっては10点になりうる1点のミステリ、という理解が正しいだろう。間を取って私は5点にした。
この作品やこれの作者の作品に影響を受けた作家や、これらをリスペクトしている作家が活躍しているのも事実である。
一読の価値はあると私は思う。


No.1 8点 不連続殺人事件
坂口安吾
(2021/04/10 22:15登録)
文庫のあらすじでは「独創的なトリック」と書いてあったが、個人的には割と普通な小説だったと思った。当時としては非常に斬新だったのだろうなあ。最近の作品になれているからか、色々な面で古いと感じてしまった。特に文体。あと非常に多い登場人物や、殺人が起こる場所なども、単なる私の偏見なのだが、割と古さを醸し出していると思う。
しかし古くて普通だからといって、イコールつまらないというわけではなく、古さを感じさせない面白さがあったのは確かだ。
作中で探偵役の巨勢博士がちょっとそれっぽいことを述べていたが(述べてなかったかも)、ここまで手がかりの無い、残さないという意思を感じる事件は、私が寡聞にして知らないだけかもしれないが、かなり珍しいと思う。
しかもこれに読者への挑戦状があるのだ。どっから手を付けろと。にもかかわらず推理披露を読んでみて、ちゃんと「心理の足あと」が残っていたことに気付かされ、驚かされてしまった。わかんねえよこんなん。
独創的と聞いてメタミステリすれすれの手口かと思ったが、全然そんなことは無かったので安心して読んで欲しい。

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