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ミステリの祭典

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pachioさんの登録情報
平均点:5.67点 書評数:3件

プロフィール| 書評

No.3 6点 地下室の殺人
アントニイ・バークリー
(2014/02/28 17:45登録)
ロンドン郊外の空き住宅の地下室で死後6ヶ月となる女性の射殺死体が発見される。モーズビー主任警部の組織的な捜査の結果、ようやく被害者の身元が判明し、容疑者が絞り込まれるが決定的な証拠が見つからない。モーズビーから再三にわたり相談を受けたシェリンガムは、今回は珍しく物語後半になって重い腰をあげる。その結果、人間観察力と想像力という二つの武器によって、真犯人を突き止める。しかし真犯人にさほど意外性はなく、シェリンガムの推理も他の諸作と比較して意表をつくものではない。前半は、スコットランドヤードの捜査ぶりが描かれ、中ほどに挟まれたシェリンガムによる小説の草稿により被害者が勤務していた寄宿学校の人間模様が手際よく描かれる。またヤードの捜査、シェリンガムの推理といった構成の面白さはある。モーズリーの有能な仕事ぶりや性格がたっぷり描かれている。水準作。


No.2 6点 遠い砂
アンドリュウ・ガーヴ
(2014/02/28 17:38登録)
 双子姉妹の一人キャロルと結婚した外交官ジェームズ・レニスンは、妻の姉夫婦が不思議な状況で死んでしまう事件に遭遇する。警察は、姉が夫の財産目当てに殺害を企んだものと結論を出すが、そんなはずは無いと言い張るキャロルは、ジェームズと共に真相を探ろうとする。一方、ジェームズの脳裏には、姉と同様に妹のキャロルも財産目当てで結婚したのではないかと言う疑惑が沸き起こる。妻に対する疑惑と事件の真相究明、このふたつの要素が巧みなストーリーテリングで優れたサスペンス小説に仕立て上げられている。しかし、私は作品の舞台となるノーフォークの荒涼とした風景描写、終盤の潮流の中での格闘シーン、そして最後に明かされる事件の真相に、英国の冒険小説の香りを感じてうれしくなってしまった。


No.1 5点 警察官よ汝を守れ
ヘンリー・ウエイド
(2014/02/28 17:21登録)
殺人罪で20年の服役を終えた男が出所した直後、警察署内で20年前にその男を逮捕した本部長が射殺される。スコットランドヤードから派遣されたプール警部は、容疑者が警察官ばかりという状況の中で、関係者の秘められた過去を洗い出し、真相に迫る。トリッキイな犯罪を、警察官の捜査過程を地道に描いていくという作風は、珍しいのではないか。場面展開が早く退屈はしないが、1934年発表という時代を感じさせられてしまうのは、今の眼で見たこの作者の限界か。黄金時代の本格は全て読んでおかなくては気が済まないというマニア向け。佳作。

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