孤独なアスファルト |
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作家 | 藤村正太 |
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出版日 | 1963年01月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | nukkam | |
(2015/11/04 05:29登録) (ネタバレなしです) 藤村正太(1924-1977)は川島郁夫名義で1949年から中短編を発表していましたが、最初の長編作品が藤村正太名義で1963年に発表された本書です。病気療養や経済的理由による断筆もあって残された作品は多くないようです。本書は発表当時、「社会派的な味を持たせた本格推理小説」と評価されたそうですが個人的には社会派要素の方が濃いように感じました。地方出身者の田代省吾が東京で味わう孤独感がよく描けています。もっとも田代がハイライトされるのは序盤と終盤で、中盤は来宮警部の足を使った地道な捜査描写で占められています。丁寧でリアリティーのある捜査と推理で作品としての完成度は高いですが、読者が自力で犯人当てにトライできる謎解きにできなかったのは社会派推理小説全盛の時代の作品ゆえやむを得なかったのでしょう。良かれと思ってしたことが苦い結末になってしまう締めくくりが印象的です。 |