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ミステリの祭典

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87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1964年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 tider-tiger
(2015/10/23 06:44登録)
雑役夫のジョージ・ラッサー(86歳)が勤務先のビルの地下室で斧で滅多打ちにされて殺害された。聞き込みにより、被害者の複雑な家庭の事情や、被害者が事件現場であるビルの地下室で違法の賭場を開いていたなどの情報がもたらされるのだが……。

この作品は評判が良くないようです。タイトルは斧でも内容は鼻毛切りレベルだと。確かに重要な作品ではないでしょう。だがしかし、個人的には面白かった。
八十六歳の老人が無残な死を遂げる。ところが、奇妙なことに犯行が凄惨なわりには作品には軽い雰囲気が漂っています。ユーモラスと言ってしまってもいいかもしれません。
まずは事件発生直後、パトロール警官が現場付近でいかにも怪しい黒人青年(サム)を発見し、キャレラ刑事とホース刑事の元に連れてきます。以下抜粋

「表の横丁でなにをしていたんだ、サム」
「おれはここのビル(殺害現場はこの地下室)で働いてるんだよ」
「と言うと?」
「ラッサーさん(被害者)に雇われてるのさ」
「仕事は、なんだ」
「薪割りだよ」

その場にいた全員沈黙。拳銃に手をかける警官もいます。繰り返しますが、凶器は斧です。思わず笑ってしまいました。もちろんサムは犯人ではなく、この後は聞き込みを中心としたお決まりの捜査が始まります。
ところが、どうにも肩すかしの連続でうねうねと低空飛行を繰り返すのです。
(被害者の息子の胸に詰まるエピソードもあったりしますが)
犯人はまったく見当つきませんでした。動機が意外でした(コットン・ホース刑事もびっくりでした)。このオチを面白いとするか、地味(つまらん)とするかで評価が変わる作品だと思います。
作者は実験というか、遊びというか、悪ふざけというか、そんな気持ちでこれを書いたのではなかろうかと勘繰りたくなります。
私はこれ好きです。個人的には7~8点。ただし、客観的に見て評価は6点としておきます。

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