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ミステリの祭典

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地獄の綱渡り

作家 アリステア・マクリーン
出版日1976年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 Tetchy
(2015/08/29 00:36登録)
マクリーンも後期になるとレーサーなど色々なヴァリエーションが見られるが、なんと本作ではサーカスの世界。原題も“Circus”とそのものズバリ。

しかし舞台はサーカスではない。その題名は今回の主人公ブルーノ・ワイルダーマンがサーカス随一の曲芸師であり、メンタリストであることに由来する。彼は難攻不落の研究所への進入と重要機密書類奪取をCIAから依頼されるのだ。それは一流の曲芸師である彼でなければ達成しえないほど鉄壁の防御網によって守られた研究所だからだ。

本書は映画“ミッション:インポッシブル”のような難攻不落の研究所への進入に加え、サーカス団員であるナイフ投げの名手マヌエロ、無双の怪力を誇るカン・ダーン、投げ縄の名人ロン・ローバックといった一芸に秀でた個性豊かな仲間がブルーノを助ける。さらには一見ペンにしか見ない麻酔銃と毒ガス銃が登場したりとエンタテインメント色が実に濃い。
本書が1975年発表であることを考えると前掲の原型であるアメリカのスパイドラマ『スパイ大作戦』やイアン・フレミングの007シリーズの影響をマクリーンも受けていたのではないかと勘繰らざるを得ない。

しかし溜めに溜めた敵との対決は実に呆気なく終わる。この拙速に過ぎた物語の閉じ方はいかがなものだろうか?途中で作者自身が飽きてしまったかのような印象を受ける。途中でこのようなジェームズ・ボンド張りのスパイ物はガラではないと悟ったのだろうか?

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