月夜の狼 エド・ハンター&アンクル・アム |
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作家 | フレドリック・ブラウン |
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出版日 | 1965年01月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 8点 | 人並由真 | |
(2025/08/04 10:53登録) (ネタバレなし) 「わたし」こと21歳のエドワード(エド)・ハンターは叔父のアンブローズ(アム)・ハンターとともに、それまでの職場のサーカスを退去。今は二人で、アム叔父の旧知である元警察官の探偵ベン・スターロックが所長を務めるシカゴの「スターロック探偵社」の一員として働いていた。とはいえエドはまだ見習で、これからが本格的な初仕事だ。エドがスターロックから託された業務、それは若い美人の実業家ジャスチン・ハバーマンからの依頼。ジャスチンの叔父でイリノイ州のトレモントに住む発明家スチーブン・アモリーが何やら画期的な発明を為したと称し、姪に5千ドルの融資を願っているらしい。調査内容はその下調べだ。ジャスチンから話を聞き、叔父アモリーには公然と事業の内容を尋ねてもいいという許可をもらったエドは、トレモントに乗り込む。だが、そこで彼が出くわしたのは、喉笛を食いちぎられた死体だった。自分が人狼だと盲信する殺人犯「狼狂」が存在する? エドは土地の人々と関わりあいながら、予定外の事件に巻き込まれていくが。 1949年のアメリカ作品。 大のごひいきエド&アム・ハンターシリーズの第3長編。 シリーズ前作『三人のこびと』も、この次のシリーズ第4作『アンブローズ蒐集家』も4年前に読んじゃったので、本作もそろそろ読みたい! としばらく前から思っていたが、例によって確実に家のなかにあるはずの本が見つからない。仕方がないので図書館から借りてきて読む。まあ私には、よくある事だが(笑・汗)。 出だし快調、中盤ドラマチック、後半のその半ばあたりでちょっとだけダレるが、エド自身のサイドストーリー(詳しくは書かないよ)の方でどんでん返しがあり、そこから弾みがついたように面白くなる。 終盤はページ数がどんどん残り少なくなるなか、なかなか事件が底を割らず、どーすんだどーなるんだ、と思っていたら、二段構えのサプライズ! でたっぷりと最後の最後までエンターテインメントしてくれて、まとめて終わる。 いや謎解きの解法としてはややチョンボかもしれんが、ブラウンのミステリはソレでよかれと思うし、さらに今回の場合はその真相が成立する経緯のロジックにしっかり芯が通っていて、うん、いいんじゃないかと(笑)。 物語前半で、また後半で、それぞれ思ってもいなかった人生の経験値を積むエドの描写は今回も十二分に青春ミステリしていて、とてもいい。特に前半のカタの付け方は、ブラウンがこのシリーズで何を書きたいのか、改めてしっかり実感させてくれる。 前述の、部分的にほんのちょっとだけ、かったるかった感慨を踏まえて7点でいいかな、とも思ったが、それだとこの物語から得点的にもらったあれやこれやの愉しさやトキメキを掬いきれてない。やっぱ(少しだけオマケして)8点でいいや(笑)。 |
No.1 | 6点 | mini | |
(2015/09/04 09:57登録) もう一応刊行されてると言っていいと思うのだけれど、論創社からハーマン・ランドン「灰色の魔法」とフレドリック・ブラウン「アンブローズ蒐集家」が配本となる ハーマン・ランドンはこれで2冊目だけれど、最初に出したのが「怪奇な屋敷」という非シリーズ、いかにも本格派しか読みません的読者しか買わなそうなもので、何で作者のメインシリーズを出さねえんだよと思ってたら、今回のは題名からして怪盗グレイ・ファントムもののようだ、こっちは買うぞ(笑) さてもう1冊のブラウンのは驚くことにあのエド・ハンター・シリーズなのだ このシリーズは過去に創元文庫から何冊も出ているのだが、実はたった1作だけ未訳作が存在したのである それも最終作とかじゃなくてシリーズでも中途半端な順番の作で、何で1作だけ未訳で取り残されていたのかさっぱり分からん、創元では当初は全部出す予定だったみたいだけど 今回論創社から出た「アンブローズ蒐集家」では、あのビアスの名前でもあるアンブローズ名の人物の連続失踪事件を描いたもので、主人公エドに助言を与えるアム伯父の本名もまたアンブローズなのだ、これはシリーズのファンには見逃せない SFの専門読者だとブラウンはSF作家のイメージだろうが、そもそも作者のデビューはミステリー作品であり、それがエド・ハンター・シリーズ第1作目の「シカゴ・ブルース」なのだ、しかも作者の最終長編もSF作品ではなくて同シリーズなのである このシリーズ、年代を追ってのエドの成長物語的側面も有るようで、「シカゴ・ブルース」では伯父と関わって父の殺害事件に巻き込まれ、私は未読だが第2作でもまだプロの探偵役ではない そして探偵社に就職し、新米ではあってもプロの私立探偵として第1歩を記すのがシリーズ第3作目の「月夜の狼」なのだ 感動物語的要素の強かった「シカゴ・ブルース」に比べて、「月夜の狼」では怪奇的雰囲気の中での狼男?登場と死体消失の謎(中盤で真相は判明するが)とか、宇宙人との交信の真偽を巡って、逸脱気味になりながらも探偵社社員としてのプロの仕事に邁進するエドが描かれ、謎解き興味中心の読者にはこちらの方が受けそうだ まぁ、「シカゴ・ブルース」にはシリーズ第1作目らしいまた別の魅力は有るんだけどね |