密造人の娘 デボラ・ノット |
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作家 | マーガレット・マロン |
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出版日 | 1995年12月 |
平均点 | 8.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 8点 | 空 | |
(2022/11/25 00:01登録) エドガー賞等アメリカのミステリ関係4賞を受賞したというのも納得のいく、コクのある作品です。作者のじっくり型の文章とプロットのテーマ性との調和がうまくいったということでしょう。意外性はないと言う人も多いようですが、個人的にはその点全く期待していなかっただけに、真相の明かし方には少々驚かされました。シンプルなミステリとしておさまりのいい結末にしてあると思います。「私」こと密造人(酒のということですから古い話です)の娘でもある弁護士のデボラ・ノットが判事に立候補する件が、メインになる殺人事件とは無関係なのですが、事件関係者の一人の思惑とも絡んできたり、投票結果にも反映するなど、小説としてまとまっています。 ただし、最初のうちはかなり読みづらさを感じました。登場人物表(それだけでも25人も挙げられていますが)に載っていない登場人物が多すぎて、誰が誰だかわからなくなるのです。 |
No.1 | 8点 | mini | |
(2015/09/01 10:00登録) 先日に早川文庫でマーガレット・マロン「密造人の娘」が刊行された、元々は早川ミステリアス・プレス文庫で刊行されていたもので、今回は普通の早川文庫に加わったわけだ 早川ミステリアス・プレス文庫は早川がアメリカの出版社と提携して数十冊出したもので、提携上の契約とかが有ったのかもしれないが当時は普通の早川文庫との住み分けが面倒臭い文庫だった 現在ではそのいくつかは普通の早川文庫で出し直されていて、例えばアーロン・エルキンズ「古い骨」なども元々はミステリアス・プレス文庫だったのである エルキンズは早くから標準早川文庫に移行されていて、私に言わせてもらえばちょっと1人だけ恵まれ過ぎだった ミステリアス・プレス文庫で刊行されたまま放置されていた作家・作品もいくつも有り、そういう資産を生かす気がないのか早川は?と思っていたらやっとマーガレット・マロンを出してくれたわけだねえ まだトニイ・ヒラーマン、マイケル・ディブディン、キャロリン・G・ハート、トム・サヴェージ、シャーリン・マクラムとか残っているよん、いつ出してくれるのかな早川さん アメリカのミステリーの賞は、日本だと協会賞辺りに相当するMWA賞だけじゃなくて他にも幾つか有って、私立探偵小説だけが対象のシェイマス賞、バウチャーコン主催でお祭り的要素の強いアンソニー賞、ファンクラブ主催で読者投票参加型のマカヴィティ賞、コージー作家組合御用達のアガサ賞などが代表的な賞だ こういういくつも賞がある場合、よく1作で各賞を総なめって作品が有るか?という興味が湧くのだがこれがなかなか無い 例えばとある作家が、A作品でMWA新人賞、B作品でMWA本賞、また別のC作品でアンソニー賞を獲るとかはよくある、つまり別々の作品で別の賞を獲るパターンだったらそれ程珍しくは無い しかし同一作品でいくつもの賞を獲ったパターンは案外と無いのである、1992年発表の「密造人の娘」はこれらの賞を1作で総取りした珍しい例なのだ ただし上記の中でシェイマス賞だけは受賞してないが、そりゃそうでしょ「密造人の娘」はハードボイルドじゃないからねえ 読むまでは題名の由来は被害者か何等かの事件関係者の事だと思っていたが、実は主人公の女弁護士それ自身を指しているのだと知ってびっくりした ヒロインが弁護士なので便宜上、当サイトのジャンル投票はリーガルにしたが、う~ん、正直言ってあまり適切な分類ではない、やはり海外部門には”女性探偵”という区分が必要な気がする まぁ1992年というのは、グリシャムやトゥローなどと登場した年が近いので、一応はリーガルサスペンスブームの変型の一種かとも思えるが、しかしリーガルサスペンスには書き手が弁護士作家である事が暗黙の条件なので、マロン自身は弁護士ではないから微妙だ 文章はベテラン作家並みに良いが、それも道理で、マロンは全くの新人ではなくこの作以前にもミステリーが何作か有り、「密造人の娘」は作者のデビュー作などではなく出世作という位置付けだ 世のネット書評では低い評価が多いが、理由の1つにアメリカ南部の風土や選挙制度などが日本人読者に伝わり難いというのがあるみたいだが、私はそんなにその面は気にならなかったなぁ 意外性に乏しいという指摘もサプライズ勝負な作じゃないし、地味ながら数々の賞を受賞したのも頷ける傑作だ |