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ミステリの祭典

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古代史ミステリー傑作選
山前譲編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1989年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2015/07/04 22:45登録)
河出文庫のテーマ別ミステリー傑作選シリーズの一冊。
古代史のミステリといえば定番の”邪馬台国の謎”しか思い浮かばないのだけど、弥生、古墳時代から奈良、平安朝前期まで、ほぼ歴史の流れの順に6編を収録したバラエティに富むアンソロジーです。

収録作は、(a)古代の遺品や遺跡を素材にした現代のミステリと、(b)古代を舞台背景にした歴史ミステリの2つのタイプに大別される。
対馬で偶然発見された弥生時代の中国製古銭が事件の発端となる石沢英太郎「貨泉」、奈良時代の幻の古楽器を巡る謎の森真沙子「蘭陵王の闇」、平安の”応天門の変”の真相に関わる古文書が殺人を引き起こす中津文彦「隠岐ノ島死情」が(a)のタイプといえる。いずれも面白いが、歴史の謎の興味に加え、アリバイ工作&意外な犯人像という本格ミステリ成分が濃い中津作品が一番読み応えがあった。
一方(b)のタイプでは、滝村康介の「剣の塔」が素晴らしい出来栄え。蘇我馬子が探偵役になって、高句麗大使の暗殺事件を謎解く。衆人環視下の不可能殺人のトリック、解明のプロセスともに時代背景が活かされている。
新羽精之「幻の馬は遥かなる邪馬台に」は、中国人が見た6世紀の日本という構成で、赤馬伝説に騎馬民族征服説を踏まえた歴史ロマンあふれる作品。もう少し小説が上手ければもっと楽しめたと思えるのが惜しい。

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