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ミステリの祭典

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死の月

作家 シャーロット・ジェイ
出版日1955年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2016/03/05 09:51登録)
オーストラリアで暮らすエマのもとに、ニューギニア・マラパイ島の行政局に単身赴任中の夫で人類学者のデーヴィッドが自殺したという報せが入る。夫が生前に「何者かに殺されそうだ」という手紙を義父に送っていたことを知るエマは、真相を探るため一人で現地へ向かうが---------。

豪州出身の女性作家シャーロット・ジェイによる本書は、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)が主催するエドガー賞・最優秀長編部門の第1回(1954年度)の受賞作ですが、翌年以降のレイモンド・チャンドラー「長いお別れ」、マーガレット・ミラー「狙った獣」、アームストロング「毒薬の小壜」、スタンリィ・エリン「第八の地獄」などの、50年代の錚々たる受賞作のなかにあって、現在ほとんど話題に上がることがなく、忘れ去られた作品といえそうです。アントニイ・バークリーは、ガーディアン紙の書評コーナーでジェイの未訳2作品を取り上げ、”切れ者”、”魅力ある作品”と評価する一方で、やや辛口なコメントもしています。
作者の長編2作目にあたる本作は、当時オーストラリアの統治下にあったニューギニア東部を舞台にしたエキゾチズム溢れる謎解きサスペンスです。あらすじ紹介だと、勇猛果敢な女性の探偵行と受け取られかねないのですが、実際は世間知らずで頼りないヒロインが、原住民(パプア人)と白人が混在して暮らす熱帯の未開の地で、非協力的な人々の妨害に遇いながらも真相を求め、自らも成長していく物語。例によって古いポケミスの訳文が少々読みづらく、事件の核心部分が明白なのに、なかなかそこに近づかないテンポの悪さも感じますが、ジャングル奥地の村で迎える終幕は、ちょっとした衝撃を味わえます。(でも、これがエドガー賞というのはどうかな~。異色の秘境スリラーという目新しさが評価された?)。 

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