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ミステリの祭典

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藤雪夫探偵小説選Ⅰ

作家 藤雪夫
出版日2015年05月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 kanamori
(2015/06/19 22:32登録)
昭和25年に「宝石」誌の懸賞応募で鮎川哲也、島久平らと賞を競った「渦潮」がメイン。ほかに昭和20年代後半に雑誌掲載された中短編5編が収められています。

「渦潮」は、娘・藤桂子との2作目の合作長編「黒水仙」の原型となる長編ですが、発端の銀行強盗の設定は同じでも、その後の展開やメイントリック、犯人像までが後の改稿作とは異なり、全くの別物のようだったのには驚きました。ただ、菊地警部を中心とする捜査はテンポが悪く、アリバイトリックも面白みに欠け、あまりいい出来とはいえません。この内容だと「ペトロフ事件」や「硝子の家」に軍配を挙げたくなりますね。
中篇の「黒水仙」(=タイトルは同じだが、藤桂子との合作長編とは別作品。ややこしい)は、アリバイ奪取をテーマにした「幻の女」を思わせる(というか換骨奪胎のようなw)作品。”昼の月”からアリバイを崩すアイデアが面白いが、不自然な設定や説明不足と感じるところが多々あり気になった。
残る4つの短編は、内面描写がアンフェアと感じる「指紋」、証拠が専門的すぎてピンとこない「アリバイ」など、どの作品もパッとしない出来栄え。

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