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ミステリの祭典

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絢爛たる流離

作家 松本清張
出版日1964年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 斎藤警部
(2015/04/24 18:56登録)
高価なダイヤモンド指輪の持ち主の変遷を軸とした連作短編集。昭和の戦前から高度成長期まで、時が流れます。
第α話で一応のオチを見せたストーリーに第α+1話で新たな展開が待っていたり、なかなか一筋縄で行かない。
また、それぞれの話のスタイルというか持ち味が、意識的なのか結構ばらけていて、文学性の高いシリアスな犯罪小説で最後まで通すのかと思いきや本格パズラーがひょっこり出て来たりする。びっくりしたのは「これはまさか藤原宰太郎のパロディか?」と思わせる様な清張らしくもない安直な”手掛かり”の登場する話があったこと。「何、○○が××だと!? 分かった!犯人はアイツだ!」みたいな。それよりもっと凄いのが、まさかのバカトリックが出て来る某ストーリーで、その絵面を想像したらもう笑っちゃってしようがない。これ実際にやられたら被害者の苦痛はもう地獄絵図なんだと思うけど、だけどヴィジュアル的にもう反則でしょうってくらいのバカさ加減で、それをよりによって渋いトリック使いの清張が文章化しているというギャップがまた何とも。とは言え、全体を通して見るとやっぱり男女の機微を丁寧に描いた美しい犯罪物語がその中心にある。だけど所々おかしな点も見つかる。文章にしても、清張には稀な”速く読んでると何の事を言ってんのか一瞬分からなくなる”様な言葉運びの下手な文が少し見つかったりする。色んなギャップを含んだ連作集だと思う。

最後の一遍のエンディング、連作全体を締める大オチを一回見せておきながら。。 あの終わり方は”時代が軽くなった”って事を暗示しているのかなあ、分からないや。

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