狼男卿の秘密 |
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作家 | イーデン・フィルポッツ |
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出版日 | 1976年11月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | kanamori | |
(2015/03/28 18:01登録) 父の急死によって、准男爵の称号と広大な領地を引継ぐことになったウィリアム・ウルフは、領主館の図書室で古い詩集を見つける。以前から神秘主義に興味を持っていた彼は、人狼伝説を綴った詩の一節が、近い将来自分の身に起こる”予言”だと妄信し、やがて彼の身辺で詩の内容に沿った不吉な出来事が続発する--------。 怪奇小説をそろえた国書刊行会の”ドラキュラ叢書”(全10巻、紀田順一郎&荒俣宏監修)のなかの一冊。 人狼、狼憑きがテーマで、物語の大半は、オカルティズムに傾倒した若いウルフ卿が、古書に予言された”破滅の日”に向かっていく様を描いている。教区牧師と卿の婚約者であるその娘、従兄弟、領地管理人の元学友など、周辺人物がウルフ卿の精神状態を心配し右往左往するのですが、このあたりは展開がゆったりしすぎて正直なところ読むのが少々苦痛に感じた。謎の血糊や狼男の痕跡などのオカルト要素も出てくるものの、あまり怪奇性を強調しているようには思えない。 ところが、終盤の十三章で様相が一変、思わず「そういう話だったのか!」というような”構図の反転”が控えてました。たしかに、ある人物の退場が唐突で不自然だとは思っていましたが...........。本書が”ドラキュラ叢書”の一冊ということが、図らずもミスリードに繋がる一番の要因になっているかもしれない。 |