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ミステリの祭典

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何が困るかって

作家 坂木司
出版日2014年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2018/03/17 22:24登録)
「先生、今度弊社の『ミステリーズ!』に短めの短編を連載してみませんか?」
「短めの短編?つまりショートショートってことですか」
「まあ、そこはそれ、枚数の融通は利かせますよ」
「うーん、じゃあ丁度固有名詞を抑えたのを思案中ですので、やってみましょう」
という作者と編集者のやり取りがあったかどうかは定かでありませんが、そんな感じの短編集です。奇妙な味わいを持った作品がほとんどで、登場人物名はおろか、団体名や施設名、地名にいたるまで伏せられていますので、嫌でも怪しげな雰囲気に仕上がっているわけです。

寝たきりの男の喜怒哀楽と心の叫び、擬人化された洗面台の嘆きと喜び、乗り合いバスで目的地のバス停に着くための押しボタンをギリギリまで押さず、押した人間が負けという、大人げない大人たちの真剣勝負など、捻りの効いたものからオチが最初からミエミエなものまで様々。
しかし、では傑作と呼べる作品があるのかと問われると、残念ながら否と言うしかありません。平均してそこそこ面白いのですが、強烈に印象に残るものが見当たらないので、それなりの評価に落ち着くしかないですね。

『勝負』『入眠』『鍵のかからない部屋』『何が困るかって』辺りがまずまずの出来だと思います。ここが漆黒になりきれない黒坂木の現時点での限界なのではないでしょうか。

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