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ミステリの祭典

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千葉淳平探偵小説選

作家 千葉淳平
出版日2015年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 kanamori
(2015/03/08 23:08登録)
昭和38年、雑誌「宝石」短編賞の第一席入選作「或る老後」「ユダの窓はどれだ」の2作でデビューした千葉淳平の”短編全集”。解説にもありますが、雑誌「幻影城」世代には、ちょっと複雑で因縁めいたものを感じる作家名ではありますね。

「宝石」などの推理雑誌を中心に発表された13編は、密室や毒殺トリックを多用した本格色が強いものが揃っていて、東大物理工学科卒、発明協会勤務という経歴を活かしたような理化学トリックの使用が特徴と言えます。また、単にトリック小説ではなく、奇妙な味タイプでもある「或る老後」や、ユーモア風味の「ユダの窓はどれだ」など、意外と作風は幅広く、最後にツイストを効かせプロットに工夫があるものは、宝石短編賞同時受賞の天藤真に似た味わいがあります。ただ、後半の作品は通俗的なクライム小説に流れてしまっていますが。
その他、遊民の独身男・沢井が女性を巡る事件に巻き込まれる軽ミステリ連作”女”シリーズは、第1話は面白いが、連作が進むにつれ尻すぼみになった。
収録作でとくに印象に残ったのは、上記2作品と「女三人」「13/18・8」「静かなる復讐」あたりかな。

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