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ミステリの祭典

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五分後の世界

作家 村上龍
出版日1994年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 ∠渉
(2015/02/14 02:27登録)
村上龍の持つ精神世界をありのままに書き連ねたような作品なので、ある意味でノンフィクションのような作品である。でも、そういう作品をノンフィクションで書かないのが村上龍というか、『五分後の世界』である。
自分が生きている世界の「五分後の世界」、パラレルワールドになんの前触れもなく訪れてしまった主人公の小田桐、彼が行きついた世界では未だに日本は降伏をせず戦争を続けていた―。
小田桐は迷い込んだ世界の中で、もう一つの日本を知り、もう一つの歴史を知り、そこに生きる人を知り、もう一つの思想を学んでいく。そんな小田桐が戦火の中で一つの決断をして、物語は終わる。
しかし、どうしてこの世界に来たのか、そしてどこに行くのかという謎は明かされない。ただ、重要なことは、謎が解けることではなくて、当人がどう理解し、受け入れるのかである。その点において本作の結末がもつリアリティには震えた。充分にミステリの要素を含んだエンタテイメント作品であると、少なくとも自分は断言できる。
ただ、好みはかなり分かれると思う。

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