home

ミステリの祭典

login
揺れる視界

作家 笹沢左保
出版日1963年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 kanamori
(2015/02/12 19:00登録)
示談屋の池上が、東国銀行の岡本課長の交通事故死に不審を抱いて、真相究明に乗り出したのは金のためではなく、かつて岡本の愛娘を不慮の死に追いやった忌まわしい過去に決着をつけるためだった。そして関係者を訪ね歩くうちに、池上は被害者の勤め先の銀行で奇妙な出来事が相次いでいることに気付く--------。

発端の交通事故死にはトリッキィな仕掛けがあり、また銀行内部で何が起きているのかという謎を主軸にして物語が展開されるところは本格ミステリ風といえますが、池上が巡礼形式で関係者を訪ね歩き、それを契機にあらたに殺人が起きるプロットは私立探偵小説を思わせるところがあり、翳のある医大生くずれの示談屋という池上はまさにハードボイルドの主人公と言えそうです。
ただ、いかにも笹沢左保らしい虚無的な主人公の造形には惹きつけられるものがあるものの、暴かれる銀行の秘密がかなり肩すかしなものだったのが残念。なんだこんなことで.....と思ってしまう。そのため抒情性のあるラストが浮いてしまっているように感じた。

1レコード表示中です 書評