| 耳 | 
  
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| 作家 | 水上勉 | 
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| 出版日 | 1960年01月 | 
| 平均点 | 5.00点 | 
| 書評数 | 1人 | 
| No.1 | 5点 | 空 | |
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      (2015/01/15 20:54登録) ずいぶん以前に読んだ時には、つまらないと思った作品でした。 今回再読してみても、作者の代表作と比べるとやはり平凡な印象はぬぐえません。初読当時に感じた空手の扱いに対する不満は、けなすほどでもなかったと思い直したのですが、この作者にしては意外に謎解き的な骨格になっているだけに、かえってアイディアの平凡さ、蓋然性の弱さが気になってくるのです。最終章の表題でもある「耳はなぜ落ちていたか」については、誰でもすぐある仮説を思いつくでしょうし、またその答に、蓋然性の面で弱点があることにも気づくでしょう。 しかし一方で、昭和30年代の安保反対も含めた労働争議状況の描写については、さすがに迫力を感じました。水上勉というと社会派ではあっても、松本清張と異なり政治的な要素を持ったものは珍しいのですが、その意味での異色テーマも、うまく描いています。  | 
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