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ミステリの祭典

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大正二十九年の乙女たち

作家 牧野修
出版日2011年04月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2014/12/22 22:44登録)
時は大正二十九年、舞台は逢坂女子美術専門学校。逢坂は勿論大阪のことである。心斎橋、松虫など実際の地名がはっきりと描かれているにもかかわらず、なぜか大阪だけが逢坂となっている。いずれにしても、時も大正二十九年という架空の時代となっているので、逢坂でも違和感はないが。
主人公は専門学校に通う四人の女学生たちで、それぞれ個性と特徴を持った彼女たちのリアルな青春模様と、彼女たちを襲う猟奇事件を描いた時代青春ミステリである。
青春小説としてはまずまずの出来だとは思うし、牧野氏がこんな小説も書けるのだという意外な一面を見せた貴重な作品とも言える。一方ミステリとしては決して褒められた出来とは言えない。フーダニットとかトリックとかとは無縁のいかにも表層的な形ばかりのミステリだ。だから、猟奇事件もひっくるめての青春小説ととらえるのが正しいのかもしれない。そう考えれば、それなりに楽しめるのではないかと思う。
陽子が見つけて飼っている炭鉱馬のクルミが可愛らしく、時に重要な役割を果たしているのが、好ましい。偉丈夫の逸子は強すぎて、真式道の試合がいまいち盛り上がらないのが残念。

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