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ミステリの祭典

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魔の牙

作家 西村寿行
出版日1977年07月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 E-BANKER
(2014/10/26 20:44登録)
1982年発表の長編作品。
作者得意の「動物もの」のハードバイオレンス、またはハードロマン(?)

~新宿駅前のM銀行から一億八千万円を奪った強盗犯人を追って、涸沼刑事は南アルプス赤石連峰へ分け入る。折からの暴風雨を避けて、湯治場・鹿沢荘には十数名の男女が避難していた。遭遇する刑事と犯人。極限状態に追い込まれた人間の本性が交錯する、長編ハードロマン!~

さすが「西村寿行」。
数多くの作品を残した作者が得意としたのがいわゆる「動物パニック」もの。
鼠やらバッタやら、とにかく恐ろしいまでの描写で人間に襲いかかるのだが、本作で登場する動物が『魔の牙』を持つニホンオオカミ。
作中でも詳しく触れられているが、ニホンオオカミは明治時代には絶滅したとされる動物で、その生体は依然として多くの謎を秘めた伝説の生き物なのだ。
そのオオカミの大群がある山荘に閉じ込められた男女をジリジリと追い詰めていく状況。
徐々に狂っていく男女。
事態を打開しようと山荘を飛び出した屈強の男たちも、オオカミの大群の前には為すすべもなく殺られてしまう・・・

そういう訳で中盤以降は人間対オオカミという図式のなか、徐々に追い詰められていく男女の姿が生々しく書かれていく。
(そこはハードロマンの巨匠・西村寿行の真骨頂)
そして、終盤からラスト。いよいよ進退迫られた残りの男女は決死の覚悟で山を降りる覚悟をする。
それまで沈黙を守っていた屈強の刑事・涸沼のリーダーシップのもと、オオカミの群れとの決死の戦い。
でも、そこはそれ、最後には主人公は生き残るんだろうという甘い予測は大きく裏切られることになる・・・
凄惨なラストシーン。全く救いのないまま終わりを迎えることになる。
もはや冒頭の銀行強盗のくだりなど一切関係なし!
(何のためにそんなシーンを入れたんだろうと思うほど・・・)

まぁこういう手の作品をくだらないと取るか、面白いと取るかは読み手次第だろう。
本サイトではほぼ無視されている作者ではあるが、個人的には声を大にして言いたい。
「面白いものは面白い」と!

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