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ミステリの祭典

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岡田鯱彦探偵小説選 Ⅰ

作家 岡田鯱彦
出版日2014年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2014/10/22 20:48登録)
国文学者で、平安朝を背景にした時代ミステリ「薫大将と匂宮」(源氏物語殺人事件)で知られる岡田鯱彦の、昭和20年代に発表された作品集。この1巻目には、長編の「紅い頸巻(マフラー)」、怪盗”鯱先生”ものの連作短編集と、ほかに最初期の短編3編が収録されています。

「紅い頸巻」は、探偵小説作家の「私」が、かつて家庭教師をした元公爵家令嬢・紅子からの不穏な内容の手紙を受け取るところから物語が始まる。本格もの長編としてはトリック中心ではなく、終盤の惨劇が起きるまでの緊迫感や人間ドラマ的な要素を重視した内容となっていて、代表短編の「噴火口上の殺人」と雰囲気が似ている。

「鯱先生物盗り帳」は、怪盗”鯱先生”を主人公にしたユーモア連作で10編から成る、捕物帳ではなく物盗り帳なのですw
収録作のなかでは、第1話の「クレオパトラの眼」が衆人環視状況下の宝石奪取トリックもので、初登場ゆえのトリックが効いている佳作。第2話、第3話と密室殺人などの不可能犯罪ものが続きますが、総じてトリックやアイデアの原理が海外古典からの借用が多い。「光頭連盟」なぞタイトルだけでネタが半分割れているw
なかには鯱先生が普通に名探偵で、怪盗というキャラクターがどこかへ行ってしまっているのもありますが、いずれにしても昭和20年代の古い作品ということを念頭に置いて読めば、それなりに面白いです。
第2巻は、より本格パズラー色が強い作品が多く入っているらしい。またそのうち読んでみよう。

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