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ミステリの祭典

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ベイ・シティ・ブルース

作家 レイモンド・チャンドラー
出版日1984年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2015/01/29 18:57登録)
河出書房新社から30年前に出た〈アメリカン・ハードボイルド・シリーズ〉という叢書(全10巻、小鷹信光氏監修)のなかの1冊。ハメット「マルタの鷹」、ウェイド・ミラー「罪ある傍観者」、ジョン・エヴァンス「灰色の栄光」などを揃えるなか、なぜチャンドラーはこの中編集なのか、という感はありますね。なお、翻訳者は熱烈なチャンドリアンだった小泉喜美子女史。

「赤い風」(Red Wind)は、”私”がバーで射殺事件を目撃し、マンションのエレベーター前で”彼女”に出合うという”二つの偶然”があって物語が転がっていく。私立探偵としての手腕よりも、彼女が大切にする想い出を護るために、”私”がラストに採る騎士道的な行為が印象的でカッコイイ。
「密告した男」(Finger man)は、組織のボスと陰謀、クラブの賭博場、派手な銃撃戦など、道具立てがハメット風。プロットが雑然としていて一読では内容を把握しずらいところがあった。
「ベイ・シティ・ブルース」(BayCity Blues)は、ロスに隣接する架空の街が舞台で、”私”が刑事とコンビを組む設定が異色。意外な真犯人は何かとってつけたような感じがする。
ちなみに、3編とも”私”の名はフィリップ・マーロウとなっていますが、これは作者の死後に改変されたもの。パルプ雑誌に発表時は、主人公に名前はなかったらしい。

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