(2014/09/02 10:46登録)
(ネタバレなしです) 1986年発表のスピアマン教授シリーズ第2作の本格派推理小説です。英語原題は「The Fatal Equilibrium」で、Equilibriumは一般的には「均衡」と訳され、経済学では市場における需要と供給の均衡状態という意味で使われるそうです。そこに命に係わるとか致命的なとかの意味のFatalを組み合わせています。ヴァージン諸島を舞台にしたトラベル・ミステリー色の豊かなデビュー作の「殺しのコスト」(1973年)と比べて本書の舞台はハーバード大学で、容疑者も学者が揃っていてちょっと敷居が高くなりました。前作同様に経済学が講釈されていますがそれほど専門用語を乱発しているわけではなく素人にも比較的わかりやすく(一般読者に面白いかは何ともですが)、経済学が推理を助けるというスタイルは前作から踏襲されています。動機がわかれば犯人決定という結論はかなり強引で、説得力ある物証が欲しかったですね。ちなみに本書の米国原書は「The Massachusetts Institute of Technology」という、ミステリーとは関係なさそうなところから出版されていて、ミステリーでありながら教材目的も併せもつ作品のようです。余談ですが神戸大学の経済学教授が本書のスピアマン教授の推理の正当性を検証したレポート(当然ネタバレありです)を学術雑誌に投稿しています。
|