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ミステリの祭典

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路地裏の迷宮踏査
杉江松恋

作家 評論・エッセイ
出版日2014年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2014/07/26 11:34登録)
本書は、東京創元社の雑誌「ミステリーズ!」に創刊号から7年にわたり連載されてきた杉江松恋氏のコラムをまとめたもの。
クラシック・ミステリ作家から’60年代ぐらいまでの海外作家53人を取り上げ、その知られざるエピソード、意外な人間関係など、正面切った評論ではあまり語られない、いわゆる”トリビア・ネタ”を中心にした楽しい読み物になっています。

エドマンド・クリスピンとマルクス兄弟、ミッキー・スピレインとジョン・ウェンの関係など、あるときは想像をふくらませ、あるときは資料をあたって通説を検証するという内容は、まさに”迷宮踏査”というタイトルにふさわしい。
「ホックのD」の項では、作家の頭文字だけの略されたミドルネームは何の略かというネタを取り上げている。ウエストレイクのE、リューインのZなど、どーでもいいようなネタですが、こういうのも面白い。
ブックレヴューもいくつかあって、なかではバリンジャーの「赤毛の男の妻」に関するの項が秀逸。小説が書かれた時代の社会背景を知ると、作品の印象も変わってくるといういい例だと思う。
いわれてみればケメルマンのラビ・シリーズは金曜から木曜の一週間で終わりじゃないし、パット・マガーの未訳作品も残っている。「首つり判事」の追加エピローグがある別版も気になる等々、毎回面白い話題が提供されていて楽しめました。
ただ、”初心者からマニアまで”というのはどうだろう。聞いたことのない作家の”知られざるエピソード”を読んで面白いだろうか。

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