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ミステリの祭典

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水面の星座 水底の宝石
千街晶之

作家 評論・エッセイ
出版日2003年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 kanamori
(2014/07/20 20:42登録)
本格ミステリは常に”意外性”を求められる。犯人や結末の意外性、トリックの独創性、意外な動機やロジック展開などなど-------、まったくの二番煎じは叩かれる宿命なので、既存作家が書いた作品を常に意識しながら、それを超える、または改良した新味のあるアイデアを創出しつづけなければならない。
書評家・千街晶之氏のよる本書は、〈名探偵〉〈一人n役〉〈語り手〉〈操り〉〈見立て〉〈密室〉〈多重解決〉など、本格ミステリの道具立てや趣向が、オリジナルからどのように変容していったかを、独自の切り口で紐解いている。進化や発展ではなく作者が”変容”と言っているのは、後発作品の”歪み”の部分をどう評価するかを読者に委ねているから。
とにかく刺激を受けた論旨が多いが、白眉は〈名探偵〉という装置の変容を解析した第1章だろう。”事件を誰よりも早く解決できるのが名探偵の定義であるなら長編はもたない”という提起から、「謎解き以外の」名探偵の役割が、歪み変容せざるを得ないとして様々な作品の名探偵の効用を論じている。たしかに「姑獲鳥の夏」の榎木津の例は分かりやすく目から鱗だった。
テキストにした作品に深く踏み込む必要があるので、多くのネタバラシがありますが、ユニークでスリリングな内容に加え、評論といっても堅苦しさがないのがよかった。

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