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ミステリの祭典

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散歩する霊柩車(光文社文庫版)

作家 樹下太郎
出版日1987年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2014/09/05 21:36登録)
初期短編集。作者がサラリーマン小説に軸足を移す以前の、昭和30年代に発表されたミステリ作品が8編収録されている。

個人的ベストは(世評的にも同じだと思うが)表題作の「散歩する霊柩車」。
妻の遺体を乗せた霊柩車で不倫相手の三人の男のもとに次々と回っていく男の話で、トリッキイな仕掛けとオチの切れ味が抜群にいい。伏線も過不足なく、編中で唯一現在でも評価できる作品だと思う。
「夜空に船が浮かぶとき」は、冒頭の謎が魅力的ですが、ミッシングリンクものとしては真相が常識的で尻すぼみの感がある。
ともに”悪女もの”のサスペンス「ねじれた吸殻」「悪魔の掌の上で」も出来自体は悪くはないけれど、いまいち突き抜けたものがない印象を受けた。あとの後半収録作は、いずれも若い男女が主人公格で、漂うロマンチシズムがウールリッチを思わせるところがあるが、ミステリ(クライム小説)としては平凡な内容だった。
あと付け加えると、この作者はタイトルの付け方がうまい。上記以外でも「泪ぐむ埴輪」「雪空に花火を」など、読者を引きつける魅力的なタイトルだと思う。

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