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ミステリの祭典

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僕が殺しました×7

作家 二宮敦人
出版日2012年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2014/06/19 22:32登録)
誰も考え付かなかった異色の本格ミステリ。ただし途中までは。
ある朝ホテルの一室で目覚めた「ぼく」藤宮亮は警察官にミーティングルームへ連行される。そこには男女5人が集まっており、彼の到着を待って着席していた。そしていきなり警察官の川西がリエを殺したと自白を始める。亮は彼の自白が信じられなかった、というのも、リエを殺したのは自分だからだ。リエは亮の恋人だったが、あることから諍いを起こし、カッとなってナイフで刺し殺してしまったのだ。しかし、ことはそれだけでは終わらなかった。その場の全員が順番にリエを殺したと自白をするのであった。
各自の自白が、いちいち面白い物語性を含んでいて、飽きることなく読むことができる。中には変人じみたの者もいるが、ごく普通の人間でも、一つ歯車が狂うと殺人まで犯してしまうのだという現実を読者に突き付けてくる。
私のお気に入りは鉄塔を目指す少年のエピソードで、鉄塔の下には何があるのだろうかという素朴な疑問と、リエとの運命的な出会いは幻想小説のような印象さえ受ける。
そこまでは良かったのだが、結局は着地に失敗しており、せっかくの奇想をそこで台無しにしている。よって、本来ならば4点以下の評価になるべきだろうが、それぞれの自白が複雑に交錯し合って、読み物としてとても見るべきものがあると考え、この点数にした。

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