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ミステリの祭典

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三日間の幸福

作家 三秋縋
出版日2013年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2014/05/27 22:26登録)
一風変わった青春ファンタジーとでもいうべき作品。
主人公のクスノキは20歳の大学生で、極貧にあえいでいた。毎日アルバイト漬けの毎日で、過去を振り返ってもこれといって恵まれた出来事には巡り会っていない。ただただ、これからの人生において、これまでの不運を帳消しにするような幸運が待っているのではないかとの思いだけで生きているようなものであった。
ある日彼は大事にしていた本を売り払った書店で、お金に困っているのなら、寿命を買ってくれるところがあるがと聞かされる。取り敢えず行ってみると、若い女性が受付をしており、30分の査定で知らされた寿命の代価はたったの30万円だった。つまり、今後生きていてもいいことは全くないということになる。その場で彼は3ヵ月を残して寿命を売り払うことを決断する。
あくる日、彼のもとにミヤギと名乗る若い女性が監視員として派遣されてきたが、彼女は最初に査定の受付にいたその人だった。クスノキは残りの3ヵ月をどう生きるのか、次第にミヤギに惹かれていくほのかな恋心は果たして実るのか。
クスノキの斜に構えたような言動に引っ掛かりを覚えながら、なんとなく居心地のよくない気分で読み進めたが、終盤になってようやく馴染めた感じである。ハッピーエンドというわけでもないが、なかなか爽やかな余韻を残す読後感になっており、その辺りが世評の高さに繋がっているのではないかと思われる。そんなに面白いのかと問われると、それ程でもないがと言わざるを得ないのは事実であるけれど。
ただ、クスノキは自分を失敗作と評しているが、私は己を人間の出来損ないと思っているので、どこか通底する部分がある気もする。多くの読者が、そういったクスノキの懊悩に共感してこの作品は評価されているのかもしれない。

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