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ミステリの祭典

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ミステリマガジン700 国内編
日下三蔵編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2014年04月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 アイス・コーヒー
(2014/07/21 14:04登録)
ミステリマガジン700号を記念したアンソロジー、国内篇。
時代とジャンルを越えた傑作短編が集められていて、マガジンの歴史の長さを感じる。
鮎川哲也「クイーンの色紙」のような日常の謎ものの秀作や、ミステリを題材にした詩である田村隆一「死体にだって見おぼえがあるぞ」のように個性的な作品が並んでいて飽きさせない。
最近の作家も活躍し、中でも結城充考「交差」や原尞「少年の見た男」は力量を感じる作品だった。
以前から読みたかった作家の作品も数多くあり、読んで損はない一冊だった。

No.1 6点 kanamori
(2014/06/08 21:31登録)
早川書房「ミステリマガジン」創刊700号記念の文庫アンソロジー、国内編。
翻訳ミステリ専門だったEQMMに最初に載った国内ミステリ・結城昌治の「寒中水泳」から、最近一部で話題の近未来警察小説、月村了衛「機龍警察・輪廻」まで、(田村隆一の”ミステリー詩”を含めて)20編収録されている。半数の10作品が個人短編集や他のアンソロジーで既読だったのは残念ですが、ほとんど内容を忘れていたので今回再読しました。

「寒中水泳」は第1回EQMM短編コンテストの入選作で結城昌治のデヴュー作。ユーモアは控えめで割と正統なフーダニットなのが意外だが、乾いたシニカルな文体は後の作品と変わらない。
EQMMの初代編集長でもあった都筑道夫の「温泉宿」は、ややインパクトに欠ける怪談話。同じホラーであれば三津田信三の「怪奇写真作家」のほうが完成度が高い。
鮎川哲也「クイーンの色紙」は、推理作家・鮎川哲也が関わったF・ダネイのサイン色紙消失事件を、三番館のバーテンが謎解くという読者サービス溢れる作品で、ある自虐ネタが伏線になっているところが可笑しい。同じく消失トリックを扱った若竹七海「船上にて」もラストにニヤリとさせてくれる趣向が楽しい。
初読の米澤穂信「川越にやってください」は、枚数制限の関係もあってか、やっつけ仕事ぽい内容で残念でした。
そのほか、皆川博子と日影丈吉の幻想小説、原りょうの私立探偵・沢崎シリーズ短編第1作、小泉喜美子「暗いクラブで逢おう」、田中小実昌「幻の女」、片岡義男「ドノヴァン、早く帰ってきて」などの普通小説に近いものなど、ジャンルの多彩さはいかにもミスマガ的でしたが、本音のところは、日下三蔵氏の編集なら、もっと思いっきりマニアックな作品選定でもよかったのではと思う。

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