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ミステリの祭典

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ミステリマガジン700 海外編
杉江松恋編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2014年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 kanamori
(2014/06/04 21:34登録)
早川書房の「ミステリマガジン」創刊700号記念アンソロジー。前身の日本版「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン(EQMM)」時代から通算して60年近く翻訳ミステリを訳載してきた中から、杉江松恋氏が選定した海外編の本書は、フレドリック・ブラウン、パトリシア・ハイスミス、クリスチアナ・ブランド、ボアロ&ナルスジャック、エドワード・ホック、ルース・レンデル、ピーター・ラヴゼイなど、ビックネームが揃う豪華なラインナップになっている。しかも16編全てが”本邦初書籍化作品”というのがポイント高し。

収録作をジャンル毎に見ると、〈心理サスペンス〉ではハイスミス「憎悪の殺人」とレンデル「子守り」が本書の双璧だろう。ジョイス・キャロル・オーツ「フルーツセラー」の何とも言えない後味の悪さも特筆に値する。
〈歴史ミステリ〉では、『名探偵群像』に未収録のシオドア・マシスン「名探偵ガリレオ」が読めたのが個人的に一番うれしい。落下実験中にピサの斜塔で起きた密室殺人という設定が魅力的です。
タイタニック号と”思考機械”のジャック・フットレルが登場するラヴゼイ「十号船室の問題」はやや期待外れか。
〈本格〉では、レオポルド警部もののホック「二十五年目のクラス会」と、ダルジール&パスコーが登場するレジナルド・ヒル「犬のゲーム」は、ともにお馴染みのシリーズ・キャラクターのプライベートな捜査と推理が楽しめる。
〈クライム・奇妙な味〉タイプでは、ロバート・アーサーの「マニング氏の金のなる木」がO・ヘンリーを思わせる好編。このようなタイプの作品を書いていたとは思わなかった。
ボア&ナル「すばらしき誘拐」とブランド「拝啓、編集長様」は、ともに皮肉の効いたブラックなオチが印象に残る作品。
その他、シャーロット・アームストロング、ジャック・フィニイ、ジェラルド・カーシュなど、ひとつひとつ取り上げたらキリがない、翻訳短編好きには堪らない良質のアンソロジーでした。

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