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ミステリの祭典

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本郷菊坂狙撃殺人

作家 梶龍雄
出版日1986年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 kanamori
(2016/06/16 18:20登録)
本郷の菊坂通りにあるホテル4階の一室で自殺をしようとしていた登志子は、窓から狙撃事件を目撃する。ライフルの本来の標的は現場近くにいた少年だったのではと推測した彼女は、その少年が暮らす名倉邸にメイドとして潜り込むが、少年の飼い犬が轢殺される事件につづき、邸の主人がライフルで射殺される---------。

お屋敷ものの本格ミステリという定型の枠組みのなかで、本作はちょっと思い切った試みがなされていて、そのアイデア自体は面白いと思います。エラリー・クイーンの某作を連想する読者がいるかもしれません。ただ、肝となる隠されたモチーフが、たいていの日本の読者は知識として持っていないと思われるので、こんなに多くの伏線がありましたよと解決編で説明されても、素直に感心できないのが残念なところです。また、”それ”を利用して密室からのライフル銃を取り出すトリックは、さすがに無理があり、万事都合よすぎるように感じてしまいます。
探偵役が自殺志願の若い女性という設定が変わっていますが、単に奇をてらっただけではなく、ラストでちゃんと意味を持たせているのはさすがと思わせます。ヒロインと刑事との関係がもう少し書き込まれていれば、ラストシーンがより映えたのではとも思いましたが。

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