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ミステリの祭典

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バカラ

作家 服部真澄
出版日2002年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2014/04/12 02:02登録)
金、金、金。金に狂い、金に惑う。金に魅せられ、ドツボに陥っていく人々。服部真澄が今回選んだ題材は金にまつわるお話だ。

今までの服部作品は香港返還に纏わる密約と陰謀、ある技術に関する特許戦争、巨大企業の買収戦争と利権を争うことをテーマにしていたが、その利権に隠されているのはやはり金。莫大な富、利益をもたらす手札の争いだった。従ってここまで明らさまに金に纏わる争いを扱ったのは本書が初めてだ。そのためか、書かれている人物たちはいつもにも増して生々しい。

誰もが必要としている金。それは我々日々の生活であればあるほど困らないいわば安心を約束する物であり、己のステータスを示すバロメータでもある。
しかし安寧を得ようと金儲けに腐心する野心家たちが情報を駆使して、司法の手の届かない地に辿り着いた時、それまでの縁が失せ、残ったのは金だけとなる。果たして彼は本当の幸せを、安らぎを手に入れたのだろうか?
作中、主人公の志貴の独白で語られるバカラの意味。その言葉はゼロを意味するという。一攫千金を夢見てカジノでギャンブルに興じる人々。その1つ、バカラにそんな意味があるとは、つまり勝ちの向こうにあるのは無ということなのか。登場人物の一人が辿り着く境地はまさにそんな虚しさを表しているようだ。

しかし今なお持ち上がっては消えていくカジノ合法化案。現都知事が唱え、大阪市長もまた同様の案を声高に叫ぶが実現しないでいる。それはカジノが放つ煌びやかな光景ゆえに孕む闇の深さゆえか。私自身ギャンブルをしないのでカジノ合法化にはそれほど魅力を感じないが、実現することで県の財政が潤うと同時に犯罪の温床ともなり得る諸刃の剣。
本書が刊行された2002年から早くも12年が経ってなおこの状況ということは夢のまた夢の話なのだろうか。

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