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ミステリの祭典

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ディール・メイカー

作家 服部真澄
出版日1998年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2014/03/18 23:35登録)
今回服部氏が選んだのは一大メディア企業の買収劇。一頃日本でも話題になったM&Aがテーマとなっている。
その劇には2つの主役がある。
一つは世界中で有名なアニメキャラクター「くまのデニー」を抱え、そこから映画部門を創設して世界にテーマパークを持つまでになったハリス・ブラザーズ社。これはまんまディ○ニーそのものだ。特に作中で描写される「くまのデニー」の風貌はミッ○ー・マウスそのままのようだ。
もう一つはコンピューター・ビジネスの巨大企業『マジコム』社。天才的カリスマ会長兼CEOのビル・ブロックはビル・ゲ○ツを髣髴させる。こちらは恐らくマイク○ソフト社がモデルだろう。つまりアメリカきっての二大大型企業、ディズ○ーとマイ○ロソフトの仮想一騎打ち買収対決が本書であると云えよう。

服部氏が凄いのはこの買収劇にアメリカのある法律を絡ませていることだ。以前、某企業が発明した権利は会社の物か発明者の物かという問題が起きたが、本書の問題もそれに近い。
これは天才によって創立された会社が抱える盲点であり、その歴史が古ければ古いほど起こり得る事態ではないだろうか?

しかしながら服部氏の広範な知識と緻密な取材力には全く以て脱帽だ。何しろアメリカを舞台にアメリカの法律下で買収戦争を描き、さらにそこにアクションシーンも盛り込んでキチッとエンタテインメントしているのだから畏れ入る。600ページを超える大著だが、そのページ数が必要なだけの情報量、いやそれ以上の情報量を含みながらアメリカの法律に疎い我々一般読者に噛み砕いて淀みなく物語を進行させる筆の巧みさ。作品を重ねるごとにこの著者の作品はますますクオリティの冴えを見せてくれている。

我々の知らない世界を次作でも見せてくれることを大いに期待しよう。

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