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ミステリの祭典

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シンガポール脱出

作家 アリステア・マクリーン
出版日1971年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2014/03/07 22:40登録)
第1作では極寒の海、第2作目ではカリブ海に浮かぶ難攻不落の要塞と戦時下での男たちの戦いを描いてきた作者が第3作目に選んだのは日本軍が包囲する東南アジアの海からの脱出行だ。

とにかく先の読めない展開ばかりだ。日本軍が極秘裏に計画している北オーストラリア襲撃の計画書を日本軍が攻め込む前にオーストラリアに渡さなければならないとするスパイ小説から始まり、そこから海洋冒険小説に、軍事小説、さらには島での日本軍との戦いという冒険アクション小説と、あの手この手と色んな手札を惜しげもなく導入するマクリーンのサーヴィス精神旺盛さが本書でもいかんなく発揮されている。

しかし本書では日本軍がこの上なく残虐な軍隊であると書かれており、じわじわと真綿を締めるような拷問、捕虜に対する非人道的な行為が語られており、本当にそこまで酷かったのかと首を傾げてしまうくらいだ。特に中国での大虐殺を引き合いに出して、その残虐性を仄めかしていたが、これは今なお史実としては疑問視されている話だ。これは当時の欧米人が日本のみならずアジアの国の軍隊をひどく恐ろしく思っていたことによるのだろう。だから映画『ランボー』シリーズでもいずこのアジアの兵士による拷問が非人道的に描写されているかもしれない。

しかしこれほどまでに先の読めなかった作品が、結末が非常に淡泊なのはちょっと残念ではあった。

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