home

ミステリの祭典

login
最後の子

作家 岸田理生
出版日1986年04月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2014/01/06 22:32登録)
再読です。
老練な文章、時折ハッとさせられるような、情景が目の前に浮かんでくる描写力、只者ではないと感じた。しかも、初出当時まだ30代だった作者は女性である。この事実には驚きを隠せない。
この短編集の一部を紹介すると、蛇が少女に憑依し、男と交わった後、卵を産み付け新たな生命体を誕生させようとする話。ある日突然あらゆる鏡が反乱を起こし、見る者映る物すべてを歪め一部を、或いは全部を消し去る話。睡眠が重い罪と制定された現代社会、ある男が睡眠除去手術を受けたにもかかわらず、眠ってしまったのちの顛末など。
いずれも奇想が光るものばかりではあるが、ほとんど捻りがなく、なんとなく進行していき、盛り上がらないままいつの間にか読み終わっていたという作品が多いのが残念ではある。
ホラーと言うよりも、怪奇小説と呼称した方がしっくりくる短編集で、インパクトという点ではかなり薄いので、おそらく一年以内に忘れてしまいそうな感触が残る。だから、20年という年月が経ているため全く中身を覚えていなかったのも致し方ないと言うものであろう。

1レコード表示中です 書評