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ミステリの祭典

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海と月の迷路

作家 大沢在昌
出版日2013年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2014/03/12 18:47登録)
警察学校の校長職で定年を迎えた荒巻は、昭和34年に新米巡査として赴任した炭鉱の島での事件を回想し、送別会の席で後輩たちにその顛末を語りはじめる。それは、荒巻にとって苦い思い出だった------。

長崎市の沖合に浮かぶ炭鉱の島、通称「軍艦島」の派出所勤務となった新米巡査の荒巻が、島のルールという抵抗にあいながら、ある少女の変死事件を発端に連続殺人鬼の正体を追うというストーリー。
まず特殊な舞台設定が本書の読みどころ。狭い半人工島に暮らす5千人以上の島民ほとんどが炭鉱関係者で、密集した高層の集合住宅に職種毎に別れて暮らし、一種のヒエラルキーが出来ている。財閥系の炭鉱会社が島の治安業務を引き受け、警察が出る幕が限られている状況の中、荒巻巡査の苦難の”捜査”が行われる。
タイプとしては佐々木譲の警察小説に近い味わいがある。この島の構成や人間関係が丁寧に描かれている一方で、グイグイと読者を引っ張っていく作者らしい派手な展開がさほどないのが寂しい。”満月”の連続殺人鬼の正体にしても、伏線の妙味は多少あるものの、とってつけたような唐突さを感じた。でも力作には違いない。

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